「やっぱり顧問弁護士は男性にお願いしたい」女性弁護士の平均年収733万円で男性の半分以下という衝撃格差
■そもそも日本の法曹界は国際比較でも女性の割合が低い ここで、司法分野における女性比率の推移を見てみよう。 内閣府男女共同参画局の統計では、このようになっている。 法曹に占める女性割合は増えてはいるが、2021年時点で裁判官が23%、検察官で26%、弁護士は2割に満たず、ゆるやかな上昇にすぎない。裁判官、検察官における女性比率が弁護士に比べると伸びているのは、前二者は公務員であり、安定した就労が見込めるからだといわれている(伊藤塾「司法試験コラム」より)。 ■国民の半分は女性なのに、最高裁判事はなぜ男性ばかりなのか 最高裁では14名の裁判官のうち、女性は3名だけだ。最高裁判決はその後の法解釈にも関わるため、しばしばテレビのニュースにも映し出される。 ズラリと並ぶ男性たちを見ると「国民の半分は女性のはずなのに、なぜここには男性ばかり……」と思う。「もし裁判官が男女半々だったなら、判決は違っていただろうか?」と考えさせられるケースもある。 諸外国を見ると、最高裁判所裁判官の女性割合はドイツでは56%、アメリカやフランスでは33%だ。日本はイギリスと並んで1割程度と、低い割合にとどまる。 このように日本の法曹界はまだまだジェンダーギャップが大きい。しかも、女性弁護士の平均収入が男性弁護士の半分以下というのは、あまりにも差が大きすぎはしないか。考えられる理由を複数の女性弁護士にたずねてみた。 まず大きな理由として、妊娠・出産・育児によるキャリアの中断があるという。 これは弁護士にかぎらず、あらゆる職業に共通する課題ともいえる。出産・育児での女性の離職、育休取得後の時短勤務、復職してもマミートラックに陥って昇進が遅れるといった問題はかねてより指摘されている。
■ワークライフバランス重視で、企業内弁護士が人気に だが、近年は深刻な働き手不足もあり、一般企業ではかなり対応も改善されてきている。フレックス、リモートワークはもちろんのこと、病児休暇や学校行事休暇など、さまざまな策を導入する企業も多い。 だからこそ、企業内/組織内弁護士(インハウスロウヤー)として働く女性弁護士が増えているのだそうだ。 インハウスロウヤーであれば、弁護士としての資格を活かしながら、正社員という身分も保証されるため、出産を挟んでも産休・育休をとって復帰する道筋がついている。比較的、安定したキャリアを築く道のりが期待できるのだという。 弁護士全体における女性比率は2割弱であるのに対し、企業内弁護士の女性比率は40%を超えている。これは裏を返せば、女性弁護士がキャリア形成のために、就職時に積極的に安定した企業内ポストを求めていることの表れだろう。 事実、インハウスロウヤーを選んだ理由を調査したアンケートでは、回答の1位は「ワークライフバランスを確保したかったから」(63%)である(弁護士転職.jp「企業内弁護士(インハウスローヤー)の現状」)。 ■四大法律事務所以外は、少人数小規模なところが多い では、法律事務所に勤務する場合はどうだろう。 日本で四大法律事務所といわれる西村あさひ、アンダーソン・毛利・友常、森・濱田松本、長島・大野・常松などは400名以上の弁護士を擁している。しかし、このように弁護士が100名以上在籍する大手法律事務所は、日本に10社程度しかない。このような大手に勤めるのは一部の弁護士だけだ。 実際のところ、日本の法律事務所の98%は、10人以下の弁護士から成る小規模事務所なのである(日本弁護士連合会、2018年統計より)。 弁護士の多くは、司法試験に合格し、司法修士生を経たのちにイソ弁(居候弁護士)という形態で街の法律事務所に在籍して実務経験を積む。その後、自分ひとりで、または仲間数名と開業・独立するキャリアパスが多い。数名で切り盛りする法律事務所が多いのである。 一般企業の育休取得率は年々上がっており、2022年では出産する女性の80.2%、男性の17.1%が取得している。また、企業規模が大きければ社内にさまざまな部署があり、復職の際に働きやすいセクションに移るという選択肢もある。 だが、10人未満の小規模な事務所ではライフステージに応じて業務量の調整を細かく行うことは難しい。実際にクライアントや裁判所に出向くことが必要なため、リモート化できる業務も少ない。子育て期は思いきってしばらく休業するか、業務量を大きく減らさざるをえない。まずこれが、女性弁護士の平均収入を大きく下げる一因となっている。