戦後70年談話「おわび」と「侵略」 安倍首相はどう語ったか
「侵略」については直接言及せず
談話の内容については次の諸点が注目されます。 一つは、歴史認識に関する言及は間接的な表現が多く、安倍首相の考えが明確に伝わってこず、首相の談話として訴える力が弱いことです。 例えば「侵略」ですが、安倍首相談話は「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。(中略)先の大戦への深い悔悟の念とともに、我が国は、そう誓いました。」と述べています。この言葉は、日本国憲法第9条の誓いに日本が行なった戦争について「悔悟している」ことを付け加えたものであり、「侵略」したか否かについては触れていません。 談話は、続けて「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。(中略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります」とも、また、「私たちは、自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を、この胸に刻み続けます」とも述べています。 これらの言葉を整理してみると、日本の行なった戦争について「反省」「悔悟」「お詫び」していると表明する一方、「侵略」については直接言及せず、「行き詰まりを力によって打開しようとした」と述べているわけです。 「侵略」については言及せず、「行き詰まりを力によって打開しようとした」という言葉には一定の歴史観が表れているようですが、そのことはさておいて、少なくとも、「侵略」について安倍首相は明確な表明をしなかったことは談話の大きな特徴であると思います。 そして、「反省」「悔悟」「お詫び」についても、その主体は「歴代内閣」であり、「今後も、揺るぎないものであります」の中に安倍首相としての立場が含まれているように読めます。つまり、歴史認識に関する安倍首相の言葉は、一部の重要問題については間接的に語られ、「侵略」については語られていないのです。 安倍首相が「侵略」についてどう思っているかは重要なことなので、談話発表後に記者から質問が出され、安倍首相は、「中には侵略と評価される行為もあったと思います」「具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては歴史家の議論に委ねるべきであると考えています」と答えました。これで安倍首相の考えは比較的明確になりましたが、談話で表明していないことを後の質疑応答で完全に補うことはできません。「侵略」について安倍首相は明確に考えを表明しなかったという事実は残ります。