再び世界一を目指す! 囲碁ナショナルチームの挑戦
井山裕太六冠が8年ぶりに優勝し、世界一の座を手にした日本碁界。かつて囲碁は、日本のお家芸のように呼ばれ、囲碁の世界のトップは日本から生まれるのが普通だった。だが近年は、中国や韓国で10代~20代前半の若手棋士が活躍し、20代後半~30代が中心の日本のトッププロは、国際大会の場で結果が残せず、苦しい状況が続いていた。そんな状況を打破しようと今年誕生したのが、囲碁のナショナルチームである「GO 碁 JAPAN」だ。 若手棋士を中心にした選抜チームで、日本のトッププロや実力者がコーチとしてサポートし、世界の舞台で勝てる棋士を、日本碁界全体で育てていく方針だ。
勝つためならどんな作戦も使う中韓
日本の囲碁はこれまで、伝統文化や芸道としてのイメージが強く、棋士たちも1人で新しい変化を研究するなど、個人芸を極め、「美しい作品(囲碁の棋譜)を残す」ことに力を注いでいた。 一方で中国や韓国では、囲碁は格闘技やスポーツと同じ勝負事として捉えられており、勝つためならどんな作戦も使う、というスタンスだ。特に中国には、以前から国家チームがあり、優秀な選手が選抜され、トッププロがコーチについて、国際大会で勝つために協力して相手選手の研究をしたり、新しい作戦を練ったりしてきた。その結果、若い選手が世界戦で結果を残せるようになり、選手の層も厚くなったのだ。 日本も中国や韓国に追いつきたい。世界の舞台で日本の棋士が活躍することが、囲碁の普及にもつながる――そんな思いから、誕生したナショナルチームである。
日中韓で異なる選手サポート
登録選手は男性棋士18名と女流棋士が10名。U-20の選手も育成枠として登録されている。現在は、週に2回、コーチや登録選手を交えたインターネットでの対局が活動の中心だが、少しずつ結果も表れてきている。 ナショナルチーム結成後の最初の国際戦、今年6月に行われたLG杯では、日本から4名の選手が出場し、井山裕太六冠と高尾紳路九段がベスト8に進出した。準々決勝は11月に行われるが、さらなる活躍を期待したいところだ。 また女流や若手の国際戦でも、少しずつだが、日本選手はこれまでの結果を上回る成績を残し始めている。これには技術面の向上はもちろんのこと、「国際戦を戦ううえでの環境が整ったことが大きい」と、ナショナルチーム監督の山城宏九段は語る。 囲碁の国際戦は、主催するスポンサー企業の意向によって開催国が変わり、日本、中国、韓国、台湾のいずれかの国で行われる。その際中国や韓国の棋士は、必ず通訳やコーチを選手に同行させ、棋士が対局以外のことに神経を使わなくてすむように配慮している。