「トランプ大統領」が覆る? ロシアハッキング疑惑も 選挙人投票の行方は
11月8日のアメリカ大統領選挙の一般投票からすでに1か月以上が過ぎ、ドナルド・トランプ次期政権の閣僚人事任命も進んでいるが、一部の州の再集計に続き、ロシアのハッキング疑惑は次第に大きくなっている。国民の中の不満はなかなか消えない中、19日の「選挙人投票」の動向が大いに注目される。(上智大学教授・前嶋和弘) 【写真】米大統領選のキーワード 「一般投票」「選挙人」「勝者総取り」とは?
やっぱり“世論調査通り”だった?
そもそも今回の選挙は極めて僅差だった。トランプの獲得選挙人は306で、クリントンの232に74の差をつけて勝利しているが、一般投票の得票はトランプが約6286万票、クリントンが6573万票とクリントンが約287万票もリードし、その差は4.5ポイント差となっている。この数字については選挙直前の全米規模の最後の世論調査の数字通りとなり、選挙後に様々な指摘があった「世論調査の誤り」はやや誇張されすぎているといえる。 2012年大統領選挙で、共和党候補だったロムニー候補が落とした州で今回、トランプが勝ったのは、ペンシルベニア、オハイオ、ウィスコンシン、ミシガン、フロリダ、アイオワの6州と、勝者総取り制ではないメーン州の選挙人4のうち1のみである。組み合わせにもよるが、30万から50万票を効果的に取り、いくつかの州でクリントンが勝っていれば逆転していた。逆に言えば、二極化(政治的分極化)で支持層ががちがちに固まった上に、これまで民主党支持だったいくつかの州をトランプがうまく上積みして、勝利を勝ち取ったといえる。 史上最も差が少なかった2000年選挙ほどではなかったが、極めて僅差だった。それもあって、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアなどの激戦州で米大統領選の集計をやり直す動きが出たのも必然だった。しかし、ウィスコンシン州では再集計をしたものの、トランプ勝利は変わらなかった。各州の司法がそれぞれ判断する形だったが、ペンシルベニア州の場合には州の司法当局が再集計を見送ったほか、ミシガン州などでは、一部進めていた再集計は州裁判所の決定で止められた。 日本からすれば「まだ選挙結果で争っているのか」という見方もあるかもしれないが、ぎりぎりの勝利に、クリントンに投票した人々の不満はものすごい。選挙直後は「私の大統領ではない(Not My President)」というプラカードを掲げた人々のデモは全米で続いた。リベラル派が多く、多文化主義のメッカでもある全米の各地の大学キャンパスでの抗議運動は特に激しい。このほど来日した留学時代の米大学教授も「トランプ勝利が学生たちに与えた心理的な影響はものすごい」と指摘していた。