「16歳でイスラム国(IS)の奴隷にされた」26歳女性が明かす6年半の絶望 「悪魔」の子どもも2人産まされ…クルド系少数派の悲劇
ナジラ・イスマイルさん(26)は、シリア国境に近いイラク北部シンジャール郊外の村で生まれ育った。足が速く、サッカーが得意で「男の子からも一目置かれる存在だった」という。クルド系少数派ヤジド教徒で、農家の10人家族。オクラやトマトを作り、収穫期は家族総出で手伝った。 【写真】「全て壊れてしまった」笑顔悲しく 性奴隷として拘束されたヤジド教徒の女性 18年
「決して豊かではないが、平和な楽しい日々を過ごしていた」 しかし、その生活は10年前に一変する。過激組織「イスラム国」(IS)に村が襲われたのだ。ISの戦闘員は非道を繰り返し、16歳だったナジラさんは家族と引き離されて連れ去られた。待っていたのは絶望の日々。助け出されのたのは、6年半後だった。(共同通信=文・三井潔、写真・金子卓渡) ▽「改宗するか、死を選ぶか」 2014年8月3日、黒い旗を手にした男たちが車で村に入ってきた。重武装した約20人。ISの戦闘員たちだ。ナジラさんの家族全員と住民、30人余りを1カ所に集め、リーダー格の長髪の男が銃を手に告げた。「われわれはこの地域を治めに来ただけだ。安心しろ」 ナジラさんは震えながらじっと耳を傾けていた。 「これから私たちはどうなってしまうのか」 不安は的中した。ISはイスラム教スンニ派主体の組織。孔雀天使を崇めるヤジド教を「悪魔崇拝」と敵視していた。住民を男女に分け、戦闘員が銃を突きつけ男性たちを脅す。
「改宗するか死を選ぶかだ」 拒否した男性は銃殺されたり、みんなが見守る中で高い建物から突き落とされたりした。スンニ派の住民の中にはISの動きを歓迎する声もあったが、やがて「恐怖支配」に気付く。反抗する者はスンニ派でも公開処刑された。 ▽戦地を転々、暴行の日々 ナジラさんら若い女性はトラックに乗せられ、イラク第2の都市モスルに運ばれた。ISがこの2カ月前に「建国宣言」した主要拠点だ。モスルに着くと、大規模な施設に千人余りが詰め込まれていた。 姉3人と同じ小部屋に幽閉され、ISの幹部が部屋に入ってきて性行為を求めた。ナジラさんらが拒むと、殴られた。 「絶望し、谷底に突き落とされた思いだった」 数日後、ナジラさんを含め人質約20人が郊外に連行され、再び監禁。そこへ地元イラクのISの男が来て、ナジラさんを連れ出した。 男は「ハラフ・ハムダン」と名乗った。背が高く、やや太っている。20代という。ハラフには正妻もいた。