「リニア開業の夢遠のいた」、工期延期確定に「元々無理」と住民憤り 「短縮のため多くの資金や人手割けない」JRの姿勢に疑念の声も
長野県の橋や保守基地工期延期は「遅れの範囲内」、JR説明
JR東海が、リニア中央新幹線の座光寺高架橋と保守基地(いずれも長野県飯田市)の工期を2031年3月末までと設定し、長野県内の工事完了が4年余延びるとの見通しを示し、これまで「27年開業」を旗印に負担を否応なく受け入れてきた地元自治体や住民からは、「事業者側の都合だ」「元々の工期に無理があった」と反発や疑念の声が相次いだ。 【地図】リニア中央新幹線のルート
JRは「静岡工区の遅れの範囲内」とも説明
「工期短縮のために多くの資金や人手を割けないと判断した」。飯田市役所で4日に記者会見したJRの古谷佳久・中央新幹線建設部名古屋建設部担当部長は、27年を超える座光寺高架橋と保守基地の工期設定について説明した。 JRが示した工事期間は約70カ月。仮に県内他工区で最も遅い工期の27年2月末までの完成を目指した場合、21年4月ごろには工事契約を結ぶ必要があった。古谷氏は資金と人員を投入すれば工期短縮を図れるとしたものの、南アルプストンネル静岡工区の遅れで「通常の工程で進めても、開業には影響しない」とした。 これに対し飯田市の佐藤健市長は「工事を早く終わらせてほしいという住民の期待と異なる状況」と不満を隠さず、「JRは事業主体として住民に説明し、理解を得る努力が必要だ」と強調。JRが工期設定を「静岡工区の遅れの範囲内」と説明した点を「事業者側の都合」とした。 県リニア整備推進局は取材に、沿線の生活環境への影響を最小限とするため工期短縮を求める立場に変わりはない―とした。
「ダンプ走る期間長引く」工事の影響を心配する声も
地元の座光寺地域自治会長の牧野光彰さん(74)は「最初から26年度末の工事終了は間に合わないスケジュールだったのでは」と疑問視。「子どもたちが便利な暮らしができるなら―と立ち退いた人がいる。JR東海にはもっと早く情報を出してほしかった」と話す。「ダンプカーが走る期間が長引く。通学や、お年寄りの買い物が難しくなるのでは」と心配が尽きない。
長野県内で進む工事、地質のもろさで工期見直しの可能性も
県内では、飯田市の松川橋りょう(約70メートル)、下伊那郡大鹿村の小渋川橋りょう(約170メートル)の2カ所が未発注。既に着工している工区でも、南アルプストンネルや伊那山地トンネルで地質のもろさから工事が遅れており、JRが今後工期を見直す可能性もある。
「しっかり地域と向き合うべきだ」との意見も
伊那山地トンネルが通過する同郡豊丘村の農業壬生雅穂さん(56)は「工事の遅れは静岡だけの問題ではなく、地元への説明のやり方などJRの姿勢にそもそもの問題があった」と指摘。同村では土砂災害が懸念される場所がトンネル残土の置き場になっている。「27年開業を目指すJRにせかされるように、地元は残土置き場を受け入れる議論をし、同意を求められてきた」と壬生さん。「もうリニア開業の夢は当分ないのだから、しっかりと地域に向き合い、計画を考えていくべきだと思う」と話した。 (葉山大則、伊沢智樹、佐藤勝、竹端集)