【ばいばい、アース】鬼才・冲方丁も納得!ファイルーズあいの表現力
『マルドゥック・スクランブル』(原作)や『蒼穹のファフナー』(脚本)などで知られる鬼才・冲方丁の源流にして映像化不可能といわれた傑作小説『ばいばい、アース』が、日本を代表するクリエイター陣と豪華キャスト陣によって、満を持してWOWOWオリジナルアニメ化! 獣人が住まう世界に唯一の“人間”として生きる少女・ラブラック=ベル。そんな彼女が自分のルーツを探すために出た旅の先にあるものとは……。今回は原作者の冲方丁先生と、ベル役を演じるファイルーズあいさんに、今作への想いや見どころなどを語ってもらった。 【関連画像】アニメ『ばいばい、アース』の名場面を見る!(14枚) ――デビュー間もない頃に書かれた『ばいばい、アース』がアニメ化されますが、どんな気持ちですか? 冲方 僕は14歳まで海外で過ごし、インターナショナルスクールに通っていたんですが、日本に帰ってきて感じたのは非常に大きな疎外感でした。そのときの経験を元に、ひとつの常識しかない世界へ違和感を抱きつつ、世界に疎外されながら抗い、そして和解する話を書きたいなと思って生まれたのがこの作品となります。刊行から20年以上経って、そうした僕のパーソナルな想いを普遍的なテーマとして扱っていただけたことは非常に嬉しく思っています。さらに海外展開を視野に入れ、現代のジェンダーやアイデンティティーの問題にふさわしい作品として「白羽の矢が立ちました」と言われたことも大変嬉しかったです。 ――ファイルーズさんがこの作品に感じた第一印象を教えてください。 ファイルーズ 第一楽章(第1話)の最初のアフレコのときに音響監督の久保(宗一郎)さんから、私がオーディションで選ばれた理由について「ファイルーズさんならベルの気持ちがわかると思ったからです」って言われたんです。私もエジプト人と日本人のハーフで、エジプトから日本に戻ってきたときに、先生と同じようにひとつの常識しかない世界、さらには学校という狭いソサエティが世界の全てだと思ってすごく疎外感を感じ、自分の居場所がどこにもないような気がしていました。そこからどうやって抜け出すかをずっと模索しながら生きてきた気がしますし、いまでもたまに「自分はここにいていいのかな」とか「本当の自分はどこにいるべきなんだろう」とか感じるときもあるんです。そんな私だからこそベルの気持ちを理解できると思っていますし、今作が私みたいな子たちに勇気を与えてくれる作品になるはず、そんな風に感じてもいます。 ――ファイルーズさんが演じるベルの魅力について教えてください。 ファイルーズ 原作者の先生と隣で自分の解釈を話すのは初めてのことで、すごく照れくさいんですけど(笑)。ベルってすごく裏表がなくてさっぱりした性格の子だなと思っています。ベルのように自分だけの世界に生きるとしたら、普通なら目立たないように生きていこうと、獣人に紛れるように耳をつけたり、人間の耳を隠そうと髪を伸ばしたり、とにかく自分を偽ろうとすると思うんです。でもベルは自分の身長よりも大きな大剣を振り回し、堂々と実力と努力で相手を黙らせるんです。決して鬱屈せず、常に前を向いて「私は私の道をゆく」っていう気持ちで邁進する姿はとても魅力的で格好いいなって思いますし、どこまでも自分を見失わない姿には憧れを抱きました。 ――ベルを演じるにあたって意識されていたことは何ですか? ファイルーズ 作品全体が独特な世界観なので、一回自分の持っている常識を全部捨てて「ここの世界の住人なんだ」と思い込むことから始めました。そうやって頭をリセットしてからアフレコに臨むと、自然とベルの気持ちが入ってくる感じがしたんです。これは音響監督の久保さんや監督さんとディスカッションを重ねて私なりに掴んでいった演じ方でもあったので、皆さんと一緒に作っていった感じがしています。