最近増加している『白内障本』には注意…金儲けがしたい眼科医の怪しいたくらみ
過度にPRされた「多焦点レンズ」
なぜいまでも白内障手術が抜群に儲かるのか? 理由の1つは先述したように、患者数が右肩上がりに増え続けていることである。 もう1つ、大きな理由がある。それは、幻冬舎メディアコンサルティングの白内障本である『スゴ腕眼科医が教える白内障治療 多焦点レンズ・最強のプレミアム手術のすべて』を読めば一目瞭然だった。 そう。「多焦点レンズ」がキーワードである。「最強のプレミア手術」とあるが、最強というわけではなく、実際はPRのためのキャッチフレーズだろう。 先ほど述べた1992年に保険適用となった眼内レンズは「単焦点レンズ」だった。現在も保険適用されるのは、単焦点レンズのみである。 対して多焦点レンズは、「選択療養」と「自由診療」の2つに分かれるレンズで、いずれも保険適用されない。選定療養はレンズ代の全額と特定の術前検査にかかる費用を自己負担するものであり、自由診療はすべて自己負担となる。 「選定療養」では薬事承認された保険適用の多焦点レンズを使う。「自由診療」であれば、欧米で開発されたばかりの最新の多焦点レンズも使うことができる。 おわかりのように、「自由診療」は全額自己負担なので高額となる。 多焦点レンズの種類など、眼科医院によって違うが、片眼で50万円から100万円くらいの費用が掛かり、両眼ならば100万円から200万円くらいとなる眼科医院が多い。 もちろん単焦点レンズと多焦点レンズで見え方に差がある。 保険適用の単焦点レンズの場合、ピントを合わせた距離はクリアにはっきりと見えるが、それ以外では従来と同様に眼鏡を使うことになる。 手元にピントを合わせれば、遠方を見るための近視用の眼鏡を使い、遠方にピントを合わせれば、手元用の老眼鏡が必要となる。 「多焦点レンズ」は広範囲を見ることができ、「なるべく眼鏡を掛けずに快適な生活を送る」ことを目指して開発された。手元、中間距離、遠方の3焦点にもピントが合うから、眼鏡やコンタクトレンズを使いたくない人には向いている。 『スゴ腕眼科医が教える白内障治療』では、「多焦点レンズは、白内障だけでなく、老眼なども治せて裸眼で日常生活を送れるようになる、実に前向きな治療」だと紹介されている。 さらに、「スキューバダイビングをして海の中を見てみたい」とか「子どもの頃から強い近視で不便だったので裸眼で生活できるようになりたい」などを実現するために、「スゴ腕眼科医」と一緒に、最適な多焦点レンズを選んでいくことを勧めている。 これを読めば、患者は「単焦点レンズ」よりも「多焦点レンズ」のほうがずっと良いものだと考えるだろう。 「患者を集めること」「患者の信頼性を得ること」、「自由診療の効果を深く理解してもらうこと」が、幻冬舎メディアコンサルティングの「医療本」の目的である。 しかし、眼科医たちにとっては「高額な自由診療の宣伝」が最も重要かもしれない。 『日本のお金持ち研究』では、眼科医、美容外科医が急激に増加し、若い時期に開業独立して成功を収めていることを明らかにしている。 美容外科は眼科と違い、保険診療はなく全額自己負担の「自由診療」である。「自由診療」の美容外科医が、大いに儲かっていることはよく知られているが、眼科医にとっても自由診療の治療を多く行うことができれば“儲かる”のだろう。