かまいたち、ナイナイに代わり『爆笑ヒットパレード』MCに 『お笑いの日』に続き生特番で求められる理由
相手の年齢性別立場を問わない進行
『爆笑ヒットパレード』に話を戻すと、ナインティナイン以前はパートごとにMCが代わるリレー形式が主流だった。8時間の生放送はMCのスキルだけでなく、体力や集中力、さらに若手芸人の把握や対応が求められるハードな仕事ということだろう。その点で50代前半のナインティナインから40代前半のかまいたちに若返りを図ったことは合点がいく。 あまり語られていないが、このところ、かまいたちのMCは万能ぶりが光っていた。ロケ番組の『街グルメをマジ探索!かまいまち』(フジ)では飲食店の人々などに話を振り、若者トークバラエティの『超無敵クラス』(日本テレビ)ではティーンのインフルエンサーをまとめ、濱家隆一は生放送の音楽番組『Venue101』(NHK総合)でMCとしてアーティストに対応している。 事実上のダブルMCと言える『千鳥の鬼レンチャン』(フジ)で出演者を毒気たっぷりにイジる様子も含め、出演者の年齢性別や立場を問わない進行はすでに業界トップクラスと言っていいだろう。逆にナインティナインからMCを引き継げそうな同年代の芸人は、千鳥と麒麟・川島明あたりくらいしか見当たらない。 もう1つ注目したいのは、選ばれたかまいたちが『キングオブコント』(TBS)の王者ではあるものの、ズバ抜けた影響力を持つ『M-1グランプリ』の王者ではないこと。つまり制作サイドは長年MCを務めてきたナインティナインの後継に『M-1グランプリ』の歴代王者を選ばなかったことになる。 過去にMCを務めた爆笑問題や今田耕司なども含め、「『爆笑ヒットパレード』のMCは、『M-1グランプリ』などの賞レースとは関係なく、バラエティMCのトップクラスから選ぶ」という流れを継続したのかもしれない。 かまいたちは2017年の『キングオブコント』で王者になり東京進出したものの、準優勝のにゃんこスターがフィーチャーされるなど、結局ブレイクには至らなかった。しかし、彼らはそれから2年あまりが過ぎた2019年の『M-1グランプリ』で準優勝したことでブレイクのきっかけをつかんだ。 かまいたちはネタの面白さ以上にトークやロケ、さらにコーナー進行の巧さが業界内で評価され、そこに視聴者の認知と信頼がジワジワと加わり、約5年の年月を経て「ついに時は来た」のではないか。 ■トップMCにしてインフルエンサー ただ、かまいたちの実力は2019年末の段階ですでに認められていて、業界内ではもっと早くMCのトップに君臨するという声が少なくなかった。では約5年もの年月がかかった理由は何なのか。 かつて鬼越トマホークに「実績と人気が釣り合ってねえんだよ!」「『ネクスト千鳥』みたいに言われてますけど圧倒的に華がないんで、そこまではいけないんじゃないか」などとケンカ芸のネタにされたことがあった。技術や実績は評価される一方で、番組の中心となる上でのカリスマ性を不安視する声があったのは確かだ。 また、業界内には2人の好感度を不安視する向きもあった。特に山内健司の「狂気的な笑いは好き嫌いがはっきり分かれる」という指摘は根強く、「深夜帯でしか良さが生きないのではないか」とも言われていた。しかし、年月の経過とともに2人のキャラクターや笑いに対する理解が進み、受け入れられていったのではないか。 そしてもう1つ忘れてはいけないのは、彼らがYouTube登録者数234万人、個人のX(Twitter)やInstagramのフォロワー数十万人を誇るネット上のインフルエンサーでもあること。各局にとってネットユーザーにも強い彼らは頼もしい存在であり、特に『爆笑ヒットパレード』は昭和時代から続く長寿特番だけに、新たな風を吹き込んでもらいたいのだろう。 約1か月後の2025年元旦、かまいたちは100組前後が出演するであろう芸人たちを相手にどんな進行を見せるのか。新年のおめでたいムードに湧く生中継コーナーへのツッコミなども含め、今からその活躍が楽しみだ。 ■ 木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。
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