安定しない為替市場を読み解く / 岡山大学准教授・釣雅雄
9月下旬から最近まで、為替レートはやや乱高下し、1ドル=110円台となった後に105円台になるなど、円高に戻る場面もありました。このような動きは、9月22日の記事「加速する円安、今後どうなるのか?」で予想したとおりです。 現状の為替レートは、米国の金利、とくに短期金利に依存して決まる側面が強くなっています。米国の経済状況の見通しが良くなれば金利が上昇して円安になりますが、逆に悪化すれば円高に戻っています。 しかし、そのような中で着実に米国の長期金利の上昇、すなわち金融政策の出口戦略が為替レートの決定に盛り込まれていることに、注目する必要があります。 為替レートは、円ドルであれば主に日本と米国の金利差に依存します。現状では2年等の短期金利を見るのが適切ですが、長期金利の動きで別の側面を見ることができます。 図は、「米国10年国債金利」(統計はFRBより)と「日本10年国債金利」(財務省統計)の差を縦軸にとり、横軸に円ドル為替レートをとって、今年初めから10月22日までのデータをプロットしたものです。 単純には金利差が大きいほど円安となっているのがわかりますが、もう1つ、8月下旬と9月中旬に2度シフトしていることもわかります。このときにやや大きな円安への変化がありました。実は、これらは、いずれも米国の量的緩和終了や金利引き上げについての重要なイベントがあった時期です。 すなわち、今回の為替レートの乱高下や、それに伴う株価の上下は、主に短期的な日米経済見通しに依存しているものの、それ以外にも、米国金融緩和の終了を盛り込んだ円安となっているのです。 図のようなシフト現象は頻繁にあるわけではありません。けれども、米国の金融政策の方針が定まっていないので、今後も発生する可能性(すなわち円安)があると私は考えています。そのため、為替レートが安定するまでもう少し時間が必要かもしれません。基本的には現状の円安傾向が続くと思われます。 ただし、前回記事で書いたように、現在のレートは実質的には歴史的な円安です。短期国債で金利がマイナスとなったように、日本経済はまさに異次元の状態に直面しています。どうなるか予想しにくいのですが、少なくとも為替市場も債券市場も、上下逆方向の力が働き得ることに注意しておくべきです。 (文責/釣 雅雄・岡山大学経済学部准教授)