食事代の割り勘も「キャッシュレスで」 現金を使う機会減るなか、新デザイン紙幣の発行 横川楓
新しい紙幣の発行が、7月3日から始まります。紙幣のデザイン変更は20年ぶりのことです。新紙幣も使える券売機の交換が間に合っていないお店などもあるようですが、現金を使わない「キャッシュレス」化が急速に進んでいるなか、新紙幣の発行は私たちの生活にどんな影響があるでしょうか。 * * * 先日、友人と3人で食事をした際に、こんなことがありました。 支払いの合計金額は1万2600円。3人で割ると4200円。みんなそこまで細かい現金を持ち合わせていなかったため、私がクレジットカードでまとめて支払いをし、友人たちからキャッシュレスで送金してもらうことになりました。 現金がなくても、キャッシュレス決済アプリを活用すれば、次に会った時に渡すのではなく、その場で割り勘ができます。 みなさんの中にも、割り勘はキャッシュレス決済を活用している方がいらっしゃるのではないでしょうか。私自身もキャッシュレス決済アプリやクレジットカードを利用しており、現金を使う機会はほとんどありません。 そうやって最近では使う機会が減った現金ですが、7月3日から新しい紙幣が発行されます。 「新紙幣対応、急ピッチで作業も『間に合わない』」 7月3日登場」(6月25日配信、朝日新聞デジタル) 「新札、来年7月3日発行」(2023年12月13日配信、朝日新聞デジタル) 日本銀行は12日、1万円札、5千円札、1千円札の新紙幣3種類について、2024年7月3日に発行して流通を始めると発表した。デザインの一新は04年以来20年ぶりとなる。 1万円札に描かれるのは福沢諭吉から渋沢栄一に、5千円札は樋口一葉から津田梅子に、1千円札は野口英世から北里柴三郎になり、額面の数字も大きく印刷されます。
偽造防止の技術も強化されました。 触るとざらざらする深凹版印刷、傾けると文字が浮かび上がる潜像模様や両端にピンクの光沢が見えるパールインキ、コピー機では再現できない程の微細な文字、紫外線を当てると発光する特殊発光インキなどが採用されました。見る角度で図柄が変化する3Dホログラムが紙幣で使われるのは、世界で初めてだそうです。 その一方で、紙幣の変更に伴って、飲食店などでは新紙幣にも対応できる券売機への交換や改修が必要となりました。そのための費用がかかり、新紙幣の発行までに対応が間に合わないといった声も上がっています。 ■「旧紙幣は使えない」詐欺に注意 新紙幣に変更されるといっても、今までの紙幣が買い物などで使えなくなるわけではありません。 財務省も「旧紙幣が使えなくなる」などとかたった詐欺行為に注意するよう、繰り返し呼びかけています。私たちの生活が急に大きく変化することは、基本的にはないでしょう。 そして、冒頭の話のように、世間ではキャッシュレス化が進んでいます。 現金よりも管理がしやすく、ポイントが貯まるサービスも多いため、お金のやりくりの面でもキャッシュレスのメリットは大きいです。 政府は、キャッシュレス決済化率を2025年までに4割程度に上げるという目標を掲げており、これからキャッシュレス化はさらに進んでいくことでしょう。 ただ、そうはいっても現金しか使えないお店はありますし、ほとんどのお寺のお賽銭にはやはり現金。現金を使う機会が完全にゼロになるのは、まだまだ先でしょう。 現金とキャッシュレス、状況に応じて上手に使い分けるようにしましょう。 横川楓(よこかわ・かえで) 1990年生まれ。経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得し、「やさしいお金の専門家/金融・経済アナリスト」として活動。一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓発、金融教育の普及に取り組んでいる。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)、『お金の不安と真剣に向き合ったら人生のモヤモヤがはれました!』(オーバーラップ)。
横川楓