フリーアナウンサー・神田愛花『私の本が出るまでの、最大のトラブル』
今月8日(月)、この連載をまとめた本、『王道っていう道、どこに通ってますか?』が発売される。私にとって、記念すべき人生で初めての書籍だ。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~56回)はこちら 同じ事務所には、所属して数年で写真集の出版に漕ぎ着ける子が何人もいる。大学卒業後すぐ、お天気お姉さんに就任。可愛さと拙さが相まって世の男性に「応援したい!」という感情を芽生えさせ、″お金を出してくれるファン″が多数誕生し、写真集を出しましょうとなる。それが、我が事務所での成功者の王道だ。 私はというと、大学卒業後NHKに入局。(読み間違えたら謹慎かも!?)と、この世の終わりのような目でニュースを読み、32歳で現事務所に所属。「女性らしいか弱さなんて仕事に不要!」という先輩からの教えを信じ、フリーの道をスタートさせた。そんな可愛げのない私に、「身銭を切って応援したい!」と思う殿方はいないだろう。その証拠に、フリーになって最初の2年間販売された私のカレンダーは、3年目に制作会社から「神田さんは売れないのでもうやめたい」と申し出があり、販売されなくなった。 よって、書籍のタイトル通り、事務所の王道から外れた経緯で初めての本が出版されることになった。そもそも連載企画も、書籍の内容も、ぜ~んぶ王道から外れた道を通って発売日を迎えることになった。詳しくは書籍の″あとがき″にまとめたのでぜひ読んでいただきたい。 今回の書籍には、私のフリー転身後12年間の思いが詰まっている。しっかり向き合って皆さんにお届けしたい! と思い、5月のある週末、3泊4日ホテルに籠もって作業に集中することにした。 ところが、2日目の朝6時頃、″突発的な事件″が起きた。夫からのLINEがトゥルン♪と鳴り、寝ぼけ眼で読むと、「ごめん。寝てたらウンチ漏らしちゃった」とあったのだ。驚いて飛び起きた。(は? なんで!? 意味わかんない!!)と返信したかったが、今は喧嘩を避けたい。ぐっと堪え、「どのくらい?」と返した。「ほんの少し。シーツにちょっと付いたくらい」と夫。(どういう状態なわけ!?)と返信したかったが、「そうか。写メ送って」と返信。写真を見ると、真っ白なシーツに長さ10cm×幅1.5cmくらいの大きさで茶色い液体が染み込んでいた。(これがほんの少し!? あり得ない!!)という言葉を抑え、「何があったの?」と返す。「寝ながらオナラしたらニュ~ッて出てきちゃったの、ごめん」と夫。(オナラする前になんとなくわかるでしょ!!)と怒りMAXなのを抑え、「そのままにしておいて。家に帰ったらすぐ洗うから大丈夫」と返信した。 ◆書籍に″ウン″を引き寄せた!? 我が家では、このような普通では考えられない出来事が頻繁に起きる。だから、家で落ち着いて作業をするなんてほぼ不可能なのだ。それで今回は、家で起きたことに影響を受けないように数日、ホテルに籠もる決意をしたのだった。 シーツを剥がしたことも、手洗いをしたこともない夫に、朝6時から遠隔で教えながら洗わせようか悩んだ。だが、それでは睡眠不足で執筆作業をすることになり、ミスに繋がる。今は原稿に集中することが大事! と心を決め、私が帰る日まで、ウンチを放置する判断をした。 その間、夫はどうやって寝ていたのだろう。怖くて聞いていない。だが、頭の中から家事を排除したおかげで、全224ページを2回チェックし、細かく修整ができた。 月曜日。『ぽかぽか』を終え、いよいよウンチ付きシーツが待っている自宅へ。ドキドキしながらリビングに目をやると、掃除機がかけられ、畳まれた洗濯物が。反省が伝わる。 そしていざ寝室へ……真っ白なシーツに黄土色のシミが、デーーーンッ!! 「なるほど~、やっぱりそこそこの大きさあるねぇ」と独り言が出て、主婦スイッチがON。シーツを引っ剥がし、ゴシゴシ手洗いした。まだほんのりシミが残っているが、洗濯機にズドンッ! 入念コースで洗い、ベランダに干すと、うっすら黄ばんだ箇所が残っているくせに、優雅に風で揺れた。(なんなんだろう、私の人生)と不思議に感じながら、(まぁでも、私の本にウンが付いてるっていうことなのかな?)とも思えた。 こうして誕生した私の初めてのエッセイ本。一人でも多くの方に読んでいただきたいです。どうぞ宜しくお願いします。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年7月19日号より 文・イラスト:神田愛花
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