アドビやCanvaなどの大手に挑戦する英国スタートアップRecraft、独自のデザイン向け基盤モデルでプロデザイナー領域開拓
アドビやCanvaが強い存在感を示すプロ向けのデザインツール市場だが、独自のデザイン向け基盤モデル開発によりシェア拡大を狙うロンドン発のAIグラフィックデザイン生成スタートアップ「Recraft」が話題だ。 Recraftのプラットフォームは8カ月前にリリースされたばかりだが、これまでにユーザー数は30万人を超えた。今年に入って1,200万ドルの資金調達も発表され、画像生成AIのMidjourneyやStable Diffusion、DALL-E 3などとは異なる、ブランド中心のグラフィックデザインに特化したモデルとして注目されている。 Recraftは、アドビやCanvaなどの大手企業や各国のスタートアップが熾烈なシェア争いを繰り広げるAIグラフィックデザイン市場に、どのように挑戦しているのだろうか。
ロンドン発、著名機械学習開発者によって設立されたRecraft
Recraftは、世界で最もよく使用されている機械学習フレームワークの一つである「CatBoost」の開発者であるAnna Veronika Dorogush(アンナ・ヴェロニカ・ドログシュ)氏によって、2022年に設立されたスタートアップだ。 基本無料で利用できるウェブ・プラットフォームにサインアップすると、ユーザーはテキストプロンプトで様々な画像を生成することができる。 生成した画像やイラストレーションに、ジオメトリや線のスタイル選択といった基本ツールやカラーパレットによってカスタマイズを加え、ベクターアート、アイコン、3D画像、イラストを作成できる。
拡大縮小で劣化しづらいベクター画像の生成も可能
デザインアプリやウェブプラットフォームで、AIを活用しているものは他にも存在するが、Recraftはラスター画像とベクター画像両方の生成と変換、修正を可能にするツールをユーザーに提供していることで差別化を図っている。 昨年秋、Adobeの生成AIツール「Adobe Firefly」でベクター画像を生成できるようになったことが発表され、大きな話題になった。このことからも分かるように、これまでほとんどのジェネレーティブAIツールはラスター画像しか生成できなかった。 イラストや3D画像といった、点の集まり(ピクセル)で表現するラスター画像は、複雑な色合いの表現に長けているものの、拡大すると劣化するという欠点があった。 一方、画像や文字などの2次元情報を数値化して記録することで、拡大縮小で劣化しづらいという特徴を持つベクター画像が生成できるようになると、ロゴやアイコンのようなスケーラブルな素材の作成にも、生成した素材を活用できるようになる。これがRecraftを、商用利用するにあたってより魅力的なプラットフォームにしている。