【森永卓郎の本音】株式は本来無価値 投資でお金は増えない
お金が自ら増えることはない。お金が増えるのは、働いた時と他人から奪った時だけだ。投資でお金が増えると信じている人は、「株式の時価総額は、右肩上がりで増えているではないか」と思うだろう。しかし、それは「バブル」が起きているからだ。 マルクスは、商品の価格は、労働価値か使用価値で決まるとした。製品を製造するのにどれだけの労働力が投じられているのか、あるいは、その製品がどれだけ暮らしの役に立つのかで価値が決まる。ただ、この二つの価値は一致する。企業が使い道のない商品を、手間をかけて作ることはないからだ。 ところが、現実の世界では、商品価格がしばしば労働価値や使用価値を大きく超えて値上がりする。本質的な価値がなくても、欲しい人がいれば、いくらでも値段は上がる。投機が行われるからだ。 特に金融商品は、取引の多くが投機で成り立っている。例えば為替市場では、取引の99%以上が投機だし、株式市場もほぼ同様だろう。そもそも資本主義は、投機を活用する経済システムだから、バブルの発生と崩壊は資本主義の宿命となる。 ただ、いま世界を覆っているバブルは、いかにも筋が悪い。エヌビディア一社の時価総額が日本のGDPと肩を並べるのは、とてつもない過大評価だし、宇宙開発は妄想に近い。月に行かなくても、はるかに暮らしやすい土地が、地球上にいくらでもあるからだ。 経済理論では、株価は将来受け取る配当金の現在価値を合計したものとなっている。しかし、完全競争の下では、企業の利益はゼロになるから、配当金もゼロになる。つまり株式は、本来無価値のものなのだ。現在発生している人類史上最大のバブルが崩壊すると同時に資本主義が終われば、株価は永久に戻らないだろう。(経済アナリスト)
報知新聞社