「まるで輝く宝石のように透明な空間」。国際的な受賞経験のある建築家が推す世界一の豪邸は…
建築作品に対して常に熱心に向き合い続けている建築家の窪田勝文さん。ミニマルでスタイリッシュな住宅を数多く手掛ける窪田さんが惹かれてやまない「世界一の豪邸」と、その理由を伺いました。 【写真集】ミース・ファン・デル・ローエの建築まとめ
窪田さんが選んだ“世界一の豪邸”は「ファンズワース邸」(アメリカ)
アメリカ・イリノイに立つミース・ファン・デル・ローエの代表作として有名な「ファンズワース邸」。その魅力を窪田さんは次のように語ります。 「広大で緑あふれる敷地にあり、輝く宝石のように透明な空間が、周りの自然と住む人の心を1つに融け合わせる感覚が圧倒的です。自然と共にあることを実感させ、心は自由で豊かな意識に満たされる、そんなファンズワース邸こそ“世界一の豪邸”だと思っています」
モダニズム建築を代表する巨匠ミース・ファン・デル・ローエ
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)はドイツのアーヘン出身。20世紀のモダニズム建築を代表する建築家として知られ、ル・コルビュジェやフランク・ロイド・ライトと並び「近代建築の巨匠」とも称されています。 1929年のバルセロナ万国博覧会で建てられたバルセロナ・パビリオンのためにミースがデザインしたバルセロナ・チェアは、モダンデザインの傑作として世界的に人気を博す名作椅子です。
窪田さんにとって「豪邸」とは?
「豪邸で過ごす日々の暮らしは、自然の豊かさ、自然の美しさ、そして自然の雄大さがひしひしと感じられます。その日常から自然と共に生きていることに気づかされ、建築が自然と心の垣根を取り払い、自然がはらむ雄大な生命力で心に力が湧いてくる、そんな建築が私にとっては、真の豪邸です」 自らも数多くの端正で美しい住宅をつくり出されている窪田さんがミースの建築に強く心惹かれるというのは、至極納得です。建築家の視点で「自由で豊かな意識に満たされる」と評されたファンズワース邸。私たちが実際に目にしたときは、どのように感じられるのでしょうか。この名作住宅もぜひ、実際に訪れてみたいですね。
プロフィール
窪田勝文 くぼた かつふみ/1957年山口県生まれ。1981年日本大学工学部建築学科卒業。K構造研究所を経て、1988年窪田建築アトリエ設立。1996年国連居住会議「ハビタット II」日本代表。2002年World Architecture Awards 2002 東アジア代表。2005年バルバラ・カポキン国際賞住宅部門最優秀賞受賞。2014年デダロ・ミノッセ国際賞(5回連続受賞)。2017年デダロ・ミノッセ国際賞 審査員に昇格。2022年より広島女学院大学特任教授。