ロイヤルティ の本質とは何か? 青山学院大学・小野譲司教授が説く、企業のあり方との関係性
テクノロジーの進歩によって、顧客のロイヤルティはより解像度を増してきた。ロイヤルティをいかに醸成できるかが、現在のマーケティング戦略のなかにおいて、重要な位置を占めているようにも思える。 しかしながら、ロイヤルティ=商品や企業への愛着度、というわけではない。青山学院大学・経営学部マーケティング学科の小野譲司教授は、「顧客のロイヤルティにも多様なパターンがあり、その点を踏まえて戦略を考えなければいけない」と諭したうえで、企業のあり方との関係性にも言及する。 ロイヤルティにおける多様なパターン、そして、企業そのものとの関係とは何なのか? 同氏への取材を通して、マーケターが知るべきロイヤルティの本質を探っていく。 ◆ ◆ ◆
──小野教授が考えるロイヤルティの定義を教えてください。
ロイヤルティとは、商品や企業などに対する愛着、あるいはリピートや継続契約を表す言葉として知られるが、まず前提として、心理的ロイヤルティと行動的ロイヤルティという2つの方向性があることを理解しておかねばならない。心理的ロイヤルティとは、心のなかで商品や企業などに愛着を感じていることであり、行動的ロイヤルティは実際に購入しているかどうかということだ。 愛着を感じつつ、それが継続的な購入という行動に至っている状態をいわゆる「真のロイヤルティ」と言い、愛着があるが経済的な要因などのいろいろな理由から行動に至っていない状態を「潜在的なロイヤルティ」と表現する。 加えて、いわゆる常連客ではあるものの、愛着はさほど感じていない状態を「見せかけのロイヤルティ」とも言う。たとえば、さほど好きなわけではないが、毎日同じ沿線鉄道を利用したり、長年同じ電気会社と契約していたりする場合、これに該当するだろう。実際には、真のロイヤルティを持つ顧客は少なく、ほとんどが潜在的なロイヤルティか見せかけのロイヤルティを持つ顧客ばかりということも珍しくはない。リピーターの内訳として、何%が心から好きで継続しているかに注目すべきだ。