【実録 竜戦士たちの10・8】(33)山本昌、郭と2人の1億円プレーヤー誕生…一方、「ポスト落合」候補は徹底抗戦で越年更改へ
1993年のクリスマスイブ(12月24日)は、中日の年内最後の契約更改交渉日となった。郭源治が3000万円増の1億2000万円。立浪も前回から500万円増の9500万円で契約更改を終えた。 前年は持病のひじ痛など故障に泣き、この年はキャンプから治療器具を手放すことのなかった郭は「今年ダメなら辞めるつもりでいた」と明かした。 新たな契約形態として注目される複数年契約については「僕たちはサラリーマンじゃない。一年一年が勝負。そうじゃないと野球に大切な気持ちがなくなってしまう。プレッシャーがないとダメ」と持論を展開した。 立浪も来季がプロ7年目。落合が抜け、チームリーダーとしての期待もかかるが「自分に余裕がないとできないこと。難しいけど、自分がやらなきゃという気持ちはあります」と表情を引き締めた。 山本昌、郭と2人の1億円プレーヤーが誕生。順調に進んだ中日の契約更改だったが、ただ一人、徹底抗戦の構えを見せていたのが大豊泰昭だ。年末は30日まで家族、夫人の両親らと静岡県の伊豆で過ごす予定で越年更改が決定している。 「要求は法外な金額じゃない。逆に8000万、9000万くれると言っても、いらないと言うよ。7000万でいいんだ。それが正当な数字だと思う」 打率は2割5分9厘ながら、得点圏打率2割7分2厘はチーム1位。25本塁打はパウエルに次ぐチーム2位。この2部門で落合を上回っているというのが大豊の7000万円要求の根拠だ。 6500万円提示の球団との開きは500万円。金額的には大きな開きはないが、「ポスト落合」候補としてのプライドが、大豊の強気の裏にはあるようだった。 「FAの影響で落合、松永ら本来ダウンの選手の年俸もアップするなど、年俸のバランスを崩すことになった」 年内の契約更改を終えた球団代表の伊藤潤夫は、こう球界全体の傾向を分析。「FAで移籍する選手には契約金を支払い、年俸とは別にする」との改革案を機構側に提案する考えも示した。 また自身の契約更新のため、球団事務所を訪れた監督の高木守道は「補強に関しては、今後はもうないでしょう。中途半端な選手をとるのなら、若手を鍛えた方がいい」と補強終結を宣言した。=敬称略(館林誠)
中日スポーツ