【緒方耕一】交流戦初V迫る楽天の強さの秘密凝縮 先発藤井は優れた状況判断と粘りで好投
<日本生命セ・パ交流戦:楽天3-0巨人>◇13日◇楽天モバイルパーク 交流戦前まで、あまりいい戦いができていなかった楽天が、交流戦に入って別のチームに生まれ変わったような強さを見せている。交流戦は首位で、優勝マジックは2。今試合では連敗中で元気のない巨人とはいえ、3-0で快勝。決して派手さはないが、その強さの秘密が詰まっている試合だった。 真っ先に名前を挙げたいのが、先発した藤井だろう。今試合前まで4勝1敗で防御率は2・97。成績はまずまずだが、真っすぐの球速は140キロ台をちょっと超えるぐらいで、変化球を低めに集めて打たせて取る技巧派左腕。先発しても5回以上投げたのは1度だけ。四球は36・1イニングで7個だから制球力はあるが、長いイニングを投げていないだけに、ピシャリと抑える投手ではないと思っていた。 初回は3者凡退で2奪三振。それでもそれほど圧倒的な投球をする投手には思えなかった。しかし2回無死一塁から岸田を外角高めの真っすぐで三ゴロ併殺。4回1死満塁のピンチでも長野を外角低めのチェンジアップで遊ゴロ併殺。5回1死一塁でも増田陸を内角低めのスライダーで三ゴロ併殺。まるでここに投げればゴロで引っ掛けさせられると分かっていたようなピッチングだった。 捕手の太田もいいリードをしたのだろうが、藤井自身が状況判断ができていた。4回表、先頭打者のヘルナンデスがレフト前ヒットで出塁すると、吉川が送りバント。打席には4番の岡本和を迎えた。どうするかと思って見ていたが、低めの投球を心掛け、打てる可能性があったのは2球目の内角低めのスライダー(ファウル)ぐらい。四球で歩かせ、岸田にも低めにボールを集めて四球を与えて満塁にしたが、打たれるぐらいなら厳しく攻めて四球でもいいといった粘り強さを感じさせるピッチングだった。 迫力満点の投球ではないが、低めに変化球を集め、たまに投げる真っすぐで詰まらせる。5回で18人の打者と対戦したが、フライアウトは増田陸のライトフライと泉口のサードファウルフライだけ。なんで打てないか分からないうちに抑え込んだ印象だった。 楽天の中継ぎ陣は好調で、6回以降も無失点に抑えて巨人に3連勝を決めた。楽天は交流戦を苦手にしているイメージがあるが、初優勝が目の前に迫り、チームにも勢いを感じる。残り3試合で2勝すれば他チームの成績に関係なく初優勝。目が離せなくなった。(日刊スポーツ評論家)