【全文】ウクライナ政権キーマンに単独インタビュー プリゴジンの反乱は「ロシア国家の弱さを示した」
■プーチン大統領は権力の座にとどまり続けるのか
――来年のロシア大統領選で(プーチン大統領は)変わると見ているか? 2024年に大統領選挙が行われると思いますか? 私には疑問です。プーチンは確実に、すでに大きな影響力を持っていないように思います。 ちなみにもう1点なんですが、ワグネルがロストフナドヌーからモスクワに向かっていたとき、民間人の中で誰もプーチンを守ろうとしなかった。それどころか彼らは、ワグネルたちを歓迎しました。反乱軍を歓迎したのです。彼らは「そう、支配階層を変える必要がある」と述べ、誰もプーチンを守りたがらなかったのです。つまり、(大統領選になっても)誰もプーチンを支持しないのです。 第2の要素はすでに申し上げたように、プーチンが弱い人間であるため、自分の評判をゼロにしてしまったのです。 第3の要素は、ロシアの政治エリートたちはプーチンについて、以下のことを理解しています。 (1)戦争のことを分かってない (2)政治的意志がない (3)影響力のある人物ではない、すでに世界では完全に弱い人物とみなされている もちろん、今日の政治的エリートたちは他に支援するべき人物を探すでしょうし、そこで大統領選挙に移ります。 ウクライナは戦争に勝利し――つまり、ロシアに戦術的な敗北をもたらし、その後、前線で不可逆的なプロセスが始まり、その不可逆的なプロセスによってロシアが撤退する――つまりロシア軍はロシア連邦の国境までに撤退するという事実につながります。 その後、ロシアのさまざまな地域で抗議行動、暴力行為、紛争などが始まります。別の種類の選挙が行われるでしょう。恒久的な大統領選挙ではなく、暫定的な大統領選挙また議会選挙になります。それが政治エリートの変貌になります。その活動には、プーチンの姿は、もうきっとないでしょう。
■今の戦況は?
――ロシアが“弱体化”し、ウクライナには今後、西側から兵器が供給される。かなり戦況は有利になってきていると見てよいか? おっしゃるように、ウクライナを支援するすべての国の軍産複合体の生産が徐々に増加し、ウクライナでの生産が増加しています。備蓄が続き、ウクライナ軍のソ連軍基準からNATO軍基準への完全な転換は進んでいます。武器の蓄積は確実に続いています。 確かに特定のものが不足しています。重口径の投射砲、長距離ミサイル、最新の戦術機…つまり最新世代の戦闘機が今はないです。我々はこれらすべてを手に入れます。ただ、時間が必要です。 一方、ロシアでは生産力が低下しています。生産できる量はますます少なくなっていて、ロシアはたくさんの旧ソ連製の兵器が今、ウクライナの最前線に送られています。ですから、まだ一定の兵器が残っています。 第2の要素は、北朝鮮やイランのような国々があり、何らかの形でロシアが武器などを得るのを助けているということです。 もちろん、これは一定の結果をもたらしますが、数学的な観点からは、ウクライナの兵器量は徐々に増加し、ロシアの兵器量は減少していくでしょう。 それにはある程度、時間がかかります。なぜなら、戦争のこの段階では、ウクライナがF16やATACMS、TAURUS、すなわち距離250キロ、300キロ、350キロのミサイルという追加の道具を手に入れることが重要だったからです。(手に入れれば重要だったのに)どうしてでしょう。戦争のこの段階では、ロシアの追加予備力を破壊し、ロシアの防衛組織に供給する物流を破壊することが極めて重要だからです。そうすれば、防衛組織を破壊することが容易になるからです。 ――大規模な反転攻勢が行われているが、ロシア軍の抵抗はかなり激しいようだ。今、どのような状況か? これは大きな戦争です。前線の長さは1800キロに及びます。これは第二次世界大戦以来最大の前線であり、朝鮮半島で南北戦争があった時でさえ、前線はもっと短かったです。 第2の要素は、ロシア側が関与する多くの資源です。占領地にいる動員兵力は30万~35万と、30万人を超えています。 ロシアにとっての第3の要素は、これは根本的な戦争であることです。これは、ロシアが今の形を存在し続けるかどうか、つまり外交政策などの今の概念を維持するかどうかの賭けであり、ロシアはこれを理解しています。つまり、勝つか負けるかのどちらかであり、妥協はないのです。ですからロシアは防衛構造、軍事強化、コンクリート(による防衛壁)に、たくさんの投資をしてきたのです。 ちなみに、地雷のある地帯は2万平方キロメートルに及びます。それをすべて破壊する必要があり、我々はそれを行います。 ウクライナ参謀本部によるシナリオがあります。全方位において、これらは反転攻勢ではなく「第1段階の攻撃作戦」と言い、それが戦場を形成するものです。 もちろん航空機については、いつも申し上げていますが足りていません。NATOの現代戦略の枠内で制空権を握ることが重要であるため、それが大事なのですが、足りていません。 しかし、それでもウクライナは日々、前進しています。私たちは第1防衛線に1キロ、2キロ…としがみついて、徐々に前進しています。 第1(防衛線)を突破し、第2を突破する以外、方法はありません。必ずそうしますし、私は楽観的です。 ただ、この戦争の範囲、関係する資源の量、そしてロシアが“テロや恐喝的な外交手段を用いる国”という概念として完全に姿を消すか――ロシアが支配的になり、国際政治の場で北朝鮮のような国が支配的になるというこの戦争の主な利害関係を理解するとき、その(戦いの)代償を理解し、それがいかに難しいかが分かります。ですが、我々は前進しています。 (中編へ続く)