「公的年金だけでは不十分」79.4%の結果に…本当に老後資金は「2000万円」で足りるのか
公益財団法人 生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2022年度)によれば、老後生活に対する不安の具体的な内容として、79.4%の方が「公的年金だけでは不十分」と回答しています。 過去には「老後2000万円問題」が大きな話題となりましたが、こういった調査結果を見ると、本当に老後資金は2000万円で足りるのかと心配になる方もいるでしょう。そこで、老後資金についてあらためて考えてみます。
老後2000万円問題とは? その根拠は?
老後2000万円問題は、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループが2019年に公開した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容に端を発しています。 この報告書では、高齢夫婦無職世帯の平均的な収支では毎月約5万円の不足が生じ、それを補てんするために老後の30年では約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になると試算されています。 しかし、老後2000万円問題は断片的に報道され、多くの場合は試算の条件などの詳細は明示されず、単に老後資金として2000万円が必要だという内容が世間に広く浸透することになりました。 その結果、2000万円あれば老後は安泰かと思う方も出てくるようになりました。しかし、実際には2000万円ではまったく足りないという世帯もあるでしょう。
老後資金が2000万円では足りないのはどんな世帯?
老後2000万円問題の発端となった金融庁による試算は、1ヶ月の平均的な実収入が約21万円、実支出が約26万円で、赤字額が5万円となるという夫婦2人の無職世帯での想定です。 老後に公的年金だけで夫婦2人世帯が月21万円以上の収入を得るには、会社員として平均的な収入で40年間就業した夫と専業主婦の妻が受け取る標準的な年金額が必要です。 また、自営業などで夫婦ともに国民年金のみ加入という世帯では、2人分の満額の老齢基礎年金を受け取っても令和6年度で月13万6000円(1人当たり月6万8000円)です。 こちらの場合、老後2000万円問題で試算の基となっている平均支出に対し、毎月13万円近くの不足が生じ、単純計算では30年間での総額は2000万円どころか、倍以上の金額が不足することになります。 ただし、老後の収入や支出の目安としては、総務省の最新の家計調査の結果も参考にする必要があるでしょう。 2022年度(令和4年度)の家計調査年報によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯での1ヶ月の平均的な実収入は24万6237円、実支出は26万8508円となっており、毎月の不足額は約2万2000円です。 また、老後資金がどれくらい必要なのか試算するために、将来受け取れる年金の見込み額も把握しておきましょう。年金の見込み額については、年に1回送られてくる「ねんきん定期便」のほか、マイナポータルから「ねんきんネット」を利用して確認することができます。