どこへ、をめくる

外歩きが心地よい季節です。マンネリ化した休日や、ウォーキングを継続できないあなたにうってつけのカードゲーム「ドロッセルマイヤーさんのさんぽ神」。ペラペラめくると、“どこで”“なにをするか”のお告げが出ます。そんなシンプルかつ癒し系ゲームを制作しているドロッセルマイヤーズ商會代表、渡辺範明さんに話を聞きました。 【写真】こんな指示が…気づけば散歩が長くなる！？ ――ドロッセルマイヤー商會とは、どのような会社なのでしょうか？ 渡辺さん：ボードゲームの会社です。今はメーカーとしての活動がメインですが、設立当初はボードゲームショップでした。自社制作しているゲームの特徴は「ゆるゲー」シリーズと銘打って、「ゆるく自由に遊べる＝プレイヤーが自分に合った遊び方で活用できる」ことを重視していることです。 ただ実際は、例えばアークライト、コナミ、ブシロード、小学館といった他の会社と組んで様々なボードゲームを制作しており、その内容はカジュアルなものからマニアックなものまであります。「依頼があれば、どんなボードゲームでも作ります！」というスタンスですね。 ――この「ドロッセルマイヤーのさんぽ神」というゲームは、どうやって使うんですか？ 渡辺さん：これは、散歩に目的を与えてくれるゲームです。約100ページの豆本の前半50ページが「どこで」、後半50ページが「なにをする」になっていて、それを適当にぺらっとめくって組み合わせることで「北へ向かって歩いて」「いろんな匂いを嗅いでみよう」のように、いつもとは一味違う散歩が楽しめます。 ――制作にあたっての意識したことは？ 渡辺さん：バラエティ番組のチャレンジ企画とか罰ゲームみたいにならないようにしました。そういう企画は「見る側が面白い」ことが第一に作られていますが、やっている側は必ずしも楽しいとは限りません。そうではなく、ちゃんと散歩が本来持つ楽しさを増してくれるゲームになるように作りました。 ――「船で向こう岸にわたって」など、難しいお題も。 渡辺さん：お題の難しさには、わざとバラつきを作っています。これは「近所で手軽に楽しみたい」や「普段やらない新鮮なことがしたい」など、違った気持ちでプレイできるように、好みで選べるようにしたかったからです。ルール上「できないお題、やりたくないお題はスルーしてOK」ということになっているので「今日は遠出は無理！」と思ったら、めくり直せば大丈夫です。 ――勝ち負けはあるんですか？ 渡辺さん：ないです。「勝ち負けがなくてもゲームとして成立する」というのは、この「ゆるゲー」シリーズの発見というか、思想のひとつです。 ――上級者はこう遊ぶ！みたいな、応用編はありますか？ 渡辺さん：散歩って「家の近くでいつものコースでやりたい」という事も多いと思うんですが、そういう場合は「どこで」を使わずに「なにをする」だけのページを使って遊べばOKです。よく「田舎に住んでいるので電車とかタクシーに乗れって言われてもできません！」という声をもらうのですが、そういう時にも「なにをする」だけプレイするのはオススメです。 ――誰と、どうやって遊んでほしい、みたいな希望はありますか？ 渡辺さん：休日にわざわざ友達を「散歩に誘う」ってなかなかしないと思うのですが、このゲームをきっかけに誘ってみるのはオススメです。逆に、人とする遊びに疲れてる方は1人でする「さんぽ神」みオススメですね。心のデトックスになると思います。 ――今後の野望を聞かせてください。 渡辺さん：実はアプリ版の「さんぽ神」もありまして（iOS版とAndroid版）、これはお題のカスタマイズ、写真を撮ってSNS共有など、アプリならではの機能がいろいろあります。うちはアナログゲームメーカーなのでアナログの手触りを一番重視していますが、アプリにはアプリの良さもありますね。 今後の抱負としては、「ゆるゲー」シリーズで作りたいものがまだまだあるので、さらに「これはゲームなのか？」というギリギリの境界線を追求していきたいと思います。そういう意味ではすごくアバンギャルドなんですが、逆に老若男女誰でも遊べるゲームを作っていきたいです。 ◇ 　◇　　◇ 「10駅電車で移動して」「ふらっと一泊して」など、出た瞬間は無理だと思う指令も、本当に無理なのか？と問い直すと、いや、やろうと思えばできるか…となる場合がある。10駅移動して知らない駅で降りても、また戻ってくればいいだけなのだ。生活習慣や時間に追われ、知らない間に様々な行動を制限して暮らしていることを気づかせてくれる「ドロッセルマイヤーさんのさんぽ神」。家族で、友達と、一人でも、手のひらに収まる小さな本を持って、出かけてみるのはどうだろうか。 （まいどなニュース特約・ゆきほ）