約束手形の決済期限を60日以内に短縮へ 支払いはマイナス影響 約4割、回収では 5割超がプラス影響
Q6.プラスの影響として、最も大きいことは何ですか?(択一回答)
◇「借入金を圧縮できる」が22.0% 「借入金の圧縮には至らないが、資金繰りが緩和される」が58.6%(1,445社中、848社)が最多だった。「資金繰りが緩和され、借入金を圧縮できる」が22.0%(319社)、「資金化のための手形割引が圧縮できる」が12.9%(187社)だった。 その他の自由回答では、「資金回収管理の期間短縮による事務上の手間削減」「資金繰りが緩和され、仕入先に対しても支払条件を優遇することができる」「回収期間の短縮により、リスクが減る」「取引条件が改善され、断っていた仕事も受けやすくなる」など、資金繰りの緩和やリスクの減少の回答が目立った。 ◇ ◇ ◇ TSRが今年3月、14万2,309社を対象に実施したでんさいを含む受取手形等の動向調査によると、企業の手形等の残高が大手企業を中心に増加していることがわかった。2023年(2022年10月期-2023年9月期)に財務諸表に計上された受取手形等の総額は13兆9,779億円で、売上高に占める受取手形等の比率は3.2%を占める。それだけに手形やでんさいなどの決済期限を60日以内に短縮する影響は、プラス面もマイナス面も大きく振れている。 支払いではマイナス影響が約4割なのに対し、回収ではプラス影響が5割超と一筋縄にはいかない。特に、支払いでは、「資金繰りがタイトになり、新たな借入が必要になる」とマイナス影響を回答した中小企業が30.6%に及び、大企業の16.4%の倍近くあり、サイト短縮に伴う資金需要への対応が問題に浮かび上がっている。 企業のキャッシュ・コンバージョン・サイクル(現金循環化期間)の基本は、早期回収に対し、遅い支払いだが、手形サイトの60日への短縮は回収を早める一方で、支払も早めることになる。 コロナ禍後に押し寄せる物価高、賃金上昇、過剰債務の解消遅れで苦慮している企業は多い。この状況下で、手形の決済期限の短縮が中小企業にも浸透すると、資金調達の難航から事業規模の縮小を迫られる可能性もある。ただ、賃上げや設備投資などに資金を回すことができれば、成長につながる。約60年ぶりの手形「指導基準」の見直しは、資金余裕や取引先の対応次第で、企業の明暗を分ける契機になるかもしれない。