エゴサも活用! トレンドをつかんで賢く生き残れ!【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第29回
■単なるエゴサも、立派なマーケティング術に 五十嵐 もちろん、サトさんの場合はその選手が「ファンの期待は高いけど、実力的にはイマイチだな」と思ったら、「一軍に上げるべきだ」とは発言しないですよね。そういう意味では、自分に嘘をついているわけでもないし、ファンからの同意や賞賛も得られるし、めちゃくちゃ気持ちいいですね。 里崎 そうだね。世間の声に迎合したわけじゃない。自分の目で見て、「確かにファンの人の意見にも一理あるな」と思ったから発言しただけのことだからね。 五十嵐 そうなると、サトさんの場合は単に承認欲求を満たすだけのエゴサーチじゃなくて、完全にファンの考えや市場の動向を調査するためのマーケティングとして活用しているわけですね。もし、「ファンの人の意見はわかるけど、そこまでの実力はないな」って思った場合はどうします? 里崎 そうなったら、それをそのまま言えばいい。ファンの関心が「A選手」にあるのはわかっているわけだから、「今、ファームにいるA選手は、いい素材ではあるけれど、まだまだこんな欠点がある」と発言すればいい。それで、ファンの人たちには「なるほど。A選手に期待はしていたけど、そんな課題があるのか」と納得してもらえる。もちろん、「里崎は何もわかっていない。A選手は絶対に一軍に上げるべきだ」と考えるファンもいるかもしれないけど、それは気にする必要もないでしょ。 五十嵐 この連載でも以前話題になったけど、「声の大きな反対意見」の陰には、それ以上の隠れた賛同者、いわゆる"隠れ賛"がいるわけですからね。 里崎 そうそう。これも以前に言ったけど、最悪なのは、発言したのに何もリアクションがないこと。賛成意見であれ、反対意見であれ、何らかの反応があったほうが絶対にいい。だから、相手のニーズや関心はどこにあるのかをきちんと理解することは、マーケティング的にもかなり大切なことだと思うな。 五十嵐 サトさんの場合、きちんとマーケティングリサーチをしているし、「12球団、すべての試合をチェックしている」というブランディングも定着しているから、なおさらファンの人にとっての信頼は厚いし、仕事を発注する側としても「里崎なら安心だ」と思ってもらえる。そこまでの信頼を作り上げたのはさすがですよ。 里崎 もちろん、ブランディングも意識的に、そして戦略的に行なってきているけどね。 ――さて、そろそろお時間となりました。次回は「自身のブランディング術」について伺いたいと思います。次回も引き続き、よろしくお願いします。 里崎・五十嵐 了解です。次回もよろしくお願いします! 構成/長谷川晶一 撮影/熊谷 貫