健康寿命が伸びれば、経営効率も上がる

【わが社の「健康経営」】健康経営アライアンス（2） 食事や運動を見直して健康を維持したときに、仕事で得することはなにか。不健康でも仕事のパフォーマンスを上げれば、業績や給料を上げることは可能だ。では、企業の健康経営でどんな利点につながるのか。従業員に投資した見返りは何か。このように健康と経営を結びつけると、さまざまな疑問点や課題が浮き上がる。そんな諸問題に対し業種を越えて解決すべく昨年設立された組織が「健康経営アライアンス」だ。 【具体的な評価方法の作成が不可欠】 健康経営は、従業員に投資して生産性が上がることで企業にとっては利点がある。そういわれても「本当か？」と思う人はいる。グローバルの競争激化で経営が厳しい企業にとって、従業員への投資よりも製品開発や環境整備などお金がかかることが山ほどあるからだ。 一方、従業員からすれば健康になった分の給与の増額など、健康経営を実感できることはまだ少ない。業績を上げれば給与に反映されるが、健康になったから業績が上がったのか、健康にならなくても上がったのか、わかりづらいのだ。 「従業員の健康意識を高めて健康に導いたとしても、評価まできちんとできないと健康経営は浸透しません。一過性の取り組みで終わってしまう可能性もあります。それを防ぐため、どの企業でも導入できるような具体的な評価方法について、産学協同で開発を進めています」と、オムロン健康経営アライアンス推進室室長の酒井青良氏は説明する。 【分科会で並行して課題の解決に取り組む】 健康経営アライアンスは400社以上が会員となっているだけに、健康経営の投資対効果以外に、従業員の個人データの取り扱いや、不健康の放置群に対するアプローチ法などさまざまな課題がある。優先順位をつけ5つの課題に対する分科会を作り、現在、打開策を模索しているという。 「学術、法律、情報処理などの専門家も交えて、評価法や仕組みなどを検討しています。産業によって健康意識も全く異なるため、健康経営アライアンスは互いの情報交換の場にもなっています」（酒井氏） 日本は長寿国だが、自立した生活を営める健康寿命は、平均寿命より約10年短い。寝たきりになれば医療費がかかるなど出費が増える。それを防げば、個人の出費も、企業の出費も、国の出費も減らすことが可能だ。しかも、健康経営の投資対効果が明確になれば、システム導入などで新たなビジネスも生まれる。超高齢社会が持続していく切り札が、健康経営に託されているといっても過言ではない。