長野・戸隠神社の門前町を国の「重伝建」に 文化審が答申
国の文化審議会文化財分科会は21日、長野県長野市・戸隠地区の宝光社(ほうこうしゃ)、中社(ちゅうしゃ)など戸隠神社の門前町を形成する町並みを国の「重要伝統的建造物群保存地区」(重伝建)に選定するよう文科相に答申しました。古来の戸隠信仰を伝える門前町であり、今も残る宿坊の伝統的な建造物は戸隠地域の豊かな自然とともに貴重な存在であるとしています。
戸隠宝光社の全域や中社など
重伝建に選定されるのは戸隠宝光社の全域と中社、宝光社東、宝光社西、堂前林(どうまえばやし)、向林(むけべし)、東谷(ひがしたに)、上泡原(かみあわら)のそれぞれ一部で、対象面積は約73.3ヘクタール。
対象の地域は長野市の北西部で新潟県と県境を接し、2005(平成17)年に長野市と合併した旧戸隠村の中央部。妙高戸隠連山国立公園の裾野にあり、標高1100メートル以上に位置します。 評価されたのは、古くからの戸隠信仰を戸隠講として伝え、その受け入れ施設として近世から整備された大型の宿坊群による門前町の町並み。中社と宝光社の社殿から南北に延びる「大門通り」と、横に交わる「横大門通り」を軸に「逆三角形の町割りを形成している」のが特徴です。
集落は南向きの斜面にあり、参拝者の世話や案内をする社家・しゃけ(御師家・おしけ)や農家在家(ざいけ)の家は道路から離れて置かれ、生垣(いけがき)などで囲われています。社家の入り口には門があります。商家在家の家は道路に面しており、生垣などはありません。 社家の建物は戸隠に参る人たちの宿坊としても機能したため「大規模かつ豪壮な造り」。主屋内に祭殿を置き、観賞用の庭園も整えるなど、「宿坊建築の特徴をよく示している」とされています。
山岳に臨む戸隠信仰を軸にした町並み
こうしたことから審議会は「近世以来の地割(じわり・区画割り)をよく残し、社家の屋敷が群れをなして残されている特筆すべき地域」と評価。山岳に臨む戸隠信仰を軸にした神社と門前町で形作られた他に類をみない「高距信仰集落」(こうきょしんこうしゅうらく)であり、自然環境と戸隠神社、集落が一体となって良好に保存されている点を「価値が高い」としています。 戸隠神社は奥社、中社、宝光社、九頭龍社、火之御子社の5社からなり、古くから修験道の霊場でした。近世に「戸隠顕光寺(けんこうじ)」として栄え、明治維新で「戸隠神社」となり、戸隠講が続いています。 長野県内の重伝建選定は、南木曽町妻籠宿、塩尻市奈良井、東御市海野宿、白馬村青鬼(あおに)、塩尻市木曽平沢、千曲市稲荷山に次いで7件目になります。全国では昨年7月8日までに、江戸時代後期から明治初期にかけての茶屋建築が残る石川県金沢市の東山ひがしや茅葺き屋根の家屋が残る京都府の南丹市美山町北など43道府県110地区が重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説