週500通投稿! 『霜降りANN』常連メール職人、おもちもちもちももちの執念
◇アルコ&ピースのANNで投稿に目覚める ――おもちさんが本格的に投稿を始めたのはいつですか? おもち:19歳、大学1年生からです。富山の大学に通うために引っ越してから、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』(オールナイトニッポン0、オールナイトニッポンRを含む)に、がっつり投稿するようになりました。 ――どのあたりをおもしろいと感じました? おもち:芸人さんのラジオ番組って、オフモードで身辺の出来事をダラっと話すのが普通じゃないですか。ところが、アルピーさんの番組は、雑談やコーナーの投稿が最後に一つの物語に集約されて、コントになったりドラマ調になったり。構成が凝ってるんです。“ラジオって、こんなことができるんや。おもろ!”って驚いてしまって。それから毎週、夢中で聴いていました。自分の人生のターニングポイントでしたね。 ――すぐに常連投稿者になれたんでしょうか。 おもち:半年くらい1通も読まれませんでした。“週に20通くらい送る程度では採用されへんな。だらだらやっていてもしゃあない。真剣に向き合おう”と気持ちを入れ換えて、空いてる時間は全部ネタに費やして、毎週400通は投稿するようにしました。 すると、少しずつ読まれるようになっていくんです。“やっぱり頑張らないと採用されないんだ”って、はっきりわかった。それで結局、番組を聴いていた1年半で250通ほど採用されました。 ――ネタを爆送りするスタイルは大学時代にできあがったのですね。ところで、ペンネームの由来ですが、「ももち」ということは、元Berryz工房の嗣永(つぐなが)桃子さんのファンだったとか_ おもち:それ、よく聞かれるんです。ハロプロはまったく詳しくなくて。中学時代、ネットゲームでよく対戦する友達がいましてね。絵しりとりをやるゲームで「お餅」の絵を描くターンで、僕がツインテールの女子の絵を描いたんですよ。すると、友達が「それ、お餅やなく、ももちや!」と言うんで、僕が「それを言うなら、おもちもちもちももちや!」って言い返したんです。 その言葉の響きがおもろくてね。二人でゲラゲラ笑いました。その日の記憶がずっと頭に残ってて、ラジオネームにしたんです。結果、ちょっと言いにくい部分も含めてパーソナリティに覚えてもらいやすいから、この名前にしてよかったです。 ◇芸人をしながら霜降り明星の番組へ投稿 ――『霜降り明星のオールナイトニッポン0』で、おもちさんの名前を知った方が多いと思います。 おもち:大学を卒業した2017年、滋賀の実家へ戻り、M-1の予選を見に行ったんです。そしたら、3回戦だったか準決勝だったかは忘れたけれど、霜降りさんのネタがほんまにおもろかった。会場も大爆笑で、それから霜降りさんに興味を持ち、『霜降り明星のオールナイトニッポン0』のスタートに合わせて投稿を始めたんです。 ――大学を卒業して、関西に戻られたあとは? おもち:芸人になりたくて大阪NSCに入りました(41期)。NSCに通いながらフリーターをしていました。 ――おもちさんが関西へ戻られた翌2018年、霜降り明星は14代目のM-1チャンピオンとなり、『霜降り明星のオールナイトニッポン0』をスタートさせます。ここから、おもちさんの投稿が始まるのですね。 おもち:そうなんです。ただ、アルピーさんと違って、霜降りさんのオールナイトへの投稿は“プロ志望者がプロに向けて投稿する”という意識でした。というのも、この番組に作家に入っておられるトゥルーマン翔さんは、アルピーさんのオールナイトで約500通も採用された伝説の職人なんです。 自分は250通ほどでしたから、Wスコアで差をつけられている。そして才能が認められ、住んでいた福岡から上京して、現在は放送作家をやっておられます。“自分も頑張って投稿すれば、作家の道も拓けるんじゃないか”と思ったんです。 ――芸人から放送作家へ関心が移っていったんですね。 おもち:そうですね。NSCを卒業して、1年ほど吉本で芸人をやっていたんですが、小さなライブでクソスベリした夜に、全国ネットのラジオ番組で投稿が採用されて大ハネしている。“人って向き不向きがあるんやな”とわかりました。それで、芸人よりも裏方の方に適性があるのを感じて、吉本の所属を離れました。めっちゃ投稿するようになったのも、それくらいの頃かな。 そのおかげで、霜降りさんだけではなく、スピードワゴンの小沢さんが他の番組で名前を言ってくれるなど、いろんな人に知っていただけるようになりました。 ――現在も放送作家を目指しているんですか? おもち:いや、もう……。今ってラジオ番組がやりたかったら自分で配信できるし、YouTubeをやったり、SNSで発信したり、自分でライブを打ったり、大喜利ライブに呼ばれて出演したり、おもろいことをやろうと思ったら、いくらでも方法があるじゃないですか。 お笑いも、大阪やったら「舞台袖」「楽屋A」など、事務所に所属しない社会人芸人が活躍できる劇場も増えてきている。どんな状況でもやる気さえあればやれるし、収益もあげられるでしょう。それやったら“プロにこだわる必要はないかな”と考えるようになりました。 ――今年の『R-1』でファイナリストになった、どくさいスイッチ企画さんをはじめ、社会人お笑いのシーン、今アツいですよね。 おもち:そうなんです。僕も昨年12月から「雑食オタク」のラジオネームで、霜降りさんの番組に毎週投稿している石川エビフライさんと、「おもちフライ」というコンビを組んで漫才やってます。 プロになるには芸人は厳しすぎる世界。とはいえ、単なる社会人だと、お笑いをやりたい気持ちが抑えられなくなってしまう。“ちょうどいい生き方ってあるんじゃないか”と探っているところです。もうすぐ30歳なんで、現在はとりあえず生活を安定させて、今の彼女と楽しく暮らせたらいいなと考えています。 取材を終え、「今からまたUberEATSなんです。今日はあと7件あるんですよ」と言って笑顔で出かけていったおもちもちもちももちさん。日中はトラックに乗り、自転車に乗り、深夜になると電波に乗せて、あなたの元に笑いを届けている。 (取材:吉村 智樹)
NewsCrunch編集部