【実話】「現代かと思ったら違った!」わずか8ページ夢を失う苦しさや臨場感が「すごい」【著者に聞く】
「See you 先生!」と笑顔で下校する生徒たち。放課後、居残りして勉強に励む生徒は、将来は「医者」になりたいという。懸命に頑張る生徒の夢を応援したい先生は「自分の頭と取り換えてやりたい」と言った。sakura(@side_sinmom)さんの短編漫画「教えることを禁じられた教師の話」は、岡山空襲を題材に描いた作品。祖父の体験談を形あるものとして残したいと描いた。今回は、本作を描いたきっかけや制作の裏側について話を聞く。※本作はセンシティブな内容を含みます。閲覧には十分ご注意ください。 【漫画】本編を読む ■医者になりたかった「生徒」。子どもの夢を応援したかった「先生」。たくさんの夢が消えていった 本作はコルクマンガ専科の課題「教師」をテーマに描かれた、8ページの短編漫画。子どもたちの夢を応援したい教師が直面する、戦争の苦しさを描く。 ――制作のテーマと題材を教えてください。 課題は「教師」というテーマでした。このテーマを描く直前に、祖父母の家で当時(昭和初期)の師範学校(現・教育大学)の卒業アルバムを見つけて、祖父のエピソードを話にしてみようと思ったのがきっかけです。 以前、祖父から英語を教えることができなかったこと、教え子がたくさん沖縄戦に送られて命を落としたことを聞いていました。戦後、旅行好きだった祖父ですが、教え子を思うと沖縄はとてもつらい場所で生涯沖縄には行かなかったです(祖父は他界しています)。 現代でも、世界中で戦争が起きていますし、台湾侵攻の危機に直面していて、日本も沖縄から戦場になっていく可能性があると思います。決して昔の話ではなく、戦争がどれだけ悲惨なものか考えたいと思いました。 ――本作を制作するうえで気を付けたこと、こだわったところがあれば教えてください。 実際起きた歴史を題材にするので間違ったことは描いてはいけないと思い、沖縄戦、太平洋戦争、第二次世界大戦、岡山空襲の本、漫画、映画などを20冊以上読んだと思います。祖父から聞いていたことを時系列で並べて、時代の流れとどう交わっていくのか整理しました。 岡山空襲が起きた時の具体的な描写も事実に基づいて描きたかったので、岡山空襲、広島原爆の体験者の体験談を探して、県立図書館で見つけて読みました(館内閲覧のみ)。「岡山空襲は、警報が鳴らなかった」とか、「逃げるときに分厚い冬の布団を被って逃げた」「防空壕に逃げた人は、蒸し焼きになってほぼ全滅だった」「焼夷弾は雨のように、音を立てて降ってくる」「いろんな光がキレイに見えた」と何人も証言があり、そういった描写を絵にしていきました。 ――わずか8ページという短いページ数の中で「読ませる」のはとても難しいと思いますが、この課題はどのような勉強になりましたか? 「戦争」というジャンルは、積極的に見ようとする人が少ないと思います。でも、どうしても多くの人にこの漫画を読んでほしくて、なるべく「戦時中の話」だとわからないように前半を作っていきました。学校や背景もリアルに描かず、服装もあえて現代にもいるようなギリギリのところで描いていきました。 後半も読む人が手を止めないように、生々しい描写は極力避けました。岡山空襲の象徴でもある「岡山城が焼け落ちる」シーンまではどうしても読んでほしかったです。ネット炎上してもいいから、拡散してほしいと思った思い入れの強い作品です。 実際、炎上はしませんでしたが読んだ方から「臨場感があった」「空襲の怖さが伝わった」とコメントいただけました。あと、実際に英語教育を禁止された生徒側だった方のお孫さんにコメントをいただけたのが、自分の中で一番戦争のリアルを実感しました。 夢も希望も無くなってしまう、空から降る雨の描写は見る者の心をえぐる。ただ逃げるしかなかった、戦争の臨場感が伝わってくる。 ■取材協力:sakura(@side_sinmom)