茂木健一郎「『認知症予防』という意味においては、なるべく若いときから…」普段の生活のなかで脳を活性化させる方法は?
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「脳の活性化」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
茂木さんに質問です。人生100年時代。これからをよりよく生きられるよう頑張りたいです。脳の活性化に一番役に立つ方法を教えてください。
<茂木の回答>
茂木:脳の活性化は大事です。私も日々脳を活性化させて生きておりますが、やはり重要なポイントは負荷トレーニングです。筋トレですと、荷重をかけて筋肉を使うことによって、筋肉がどんどん太くなっていきますよね。脳の神経回路も同じことが言えます。 いろいろな回路があり、その回路に負荷をかけることで、神経回路がどんどん強くなっていきます。この負荷のかけ方が問題なのです。 たとえば、記憶力を試す方法。クイズみたいなものは、当然記憶の回路に負荷がかかります。それ以外にも、計算をするとか空間的にいろいろなイメージを処理する、あるいはこうした会話も、実は脳に負荷がかかっているわけですね。 それから、言うまでもなく運動をする。運動をすることは大脳新皮質だけでなく、小脳、大脳基底核、運動関連の領域すべてが活性化するので、これも負荷をかけることになります。ですので、生きているなかでいろいろな負荷をかけることが大事です。 そのときに、やはり偏らないことが重要です。たとえば、脳トレを「これが良いから」とそればかりやっていると、たしかにその回路は鍛えられますが、それ以外は鍛えられません。ですから、脳の活性化のおすすめとしては、人生のなかでしなければいけない課題をどんどんやっていくことに尽きるのかなと思います。 私は研究したり、教えたり、文章を書いたり話したりとかいろいろな形で仕事をさせていただいていますが、そのなかで自然にバランスのいい負荷が脳にかかっているように感じます。私は脳科学者ですが、特に脳トレをやっていません。自然に仕事をしていると、あるいはその生活のなかでいろんな雑用をやっていると、それが脳トレになるのです。 たとえば、リスナーのみなさんのなかで家事や料理をやっている方。それは立派な脳トレです。家事をやるには計画を立てなければいけませんし、料理も計画です。前頭葉を中心とする脳トレになります。 実は、脳の活性化に年齢は関係ありません。何歳になっても脳を活性化させることができます。特に認知症予防という意味においては、なるべく若いときから負荷をかけておくことが大事になります。 人生のなかでやるべきことを面倒くさがらずにやるのが、自然な形の脳トレになるのだと気付く。そうすることで、脳の活性化の日々が始まると思いますので、みなさんもぜひ楽しんで取り組んでいただけたらなと思います。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」放送より)