ホンダジェット開発者の藤野氏、米学会からダニエル・グッゲンハイム賞 過去にライト兄弟やボーイングが受賞
世界最大規模の航空宇宙分野の学術団体である米国航空宇宙学会(AIAA)は、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」を開発したホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)前社長兼CEO(最高経営責任者)の藤野道格氏に、ダニエル・グッゲンハイム・メダルを贈呈することを決めた。ライト兄弟のオーヴィル・ライトや、ボーイングの創業者ウィリアム・ボーイングをはじめ、航空宇宙分野で功績を残した人々に授与されており、藤野氏の先見的なリーダーシップやホンダジェットの革新的な設計などが評価された。藤野氏には5月に贈呈される。 【写真】ホンダジェットのコックピットや客室 ダニエル・グッゲンハイム・メダルは、航空分野の発展に顕著な功績を残したイノベーターを称えるために1929年設立。最初の受賞者はオーヴィル・ライトで、ウィリアム・ボーイングやダグラス・エアクラフト(現ボーイング)を設立したドナルド・ダグラス、シコルスキーを創業したイーゴリ・シコルスキーをはじめ、航空宇宙分野に多大な貢献をした人に贈られ、AIAAのほか米国機械学会(ASME)、SAEインターナショナル(SAE)、垂直飛行協会(VFS)が共同で主催している。 藤野氏は東京大学工学部航空学科を卒業後、本田技研工業(7267)に1984年入社。航空機の研究開発に携わり、1997年にホンダジェットのプロジェクトリーダーに就任し、2006年に米国子会社HACIを設立した。 ホンダジェットはコンセプト実証機が2003年、量産初号機が2014年に初飛行し、2015年にFAA(米国連邦航空局)の型式証明(TC)を取得。主翼上に配された低騒音エンジンや、標準仕様で乗客4人が乗れるゆったりとした客室、乗員1人でも運航出来るコックピットなどが特徴で、エンジンは米GEとの合弁会社GEホンダ製HF120を搭載している。同クラスでもっとも売れたビジネスジェットとなり、現地時間1月31日(日本時間2月1日)には250機目が顧客へ引き渡された。 今回の受賞は、新型機の型式証明取得と、航空機開発・証明・製造のための新会社・新組織の設立という、2つの課題に注力したことや、ホンダジェットの世界的な販売・サービス網の確立、藤野氏の航空学上のブレークスルーにより、航空機の性能と燃費効率を高め、乗客に優れた快適性を提供することが証明されたことが評価された。 藤野氏には、5月15日にワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ・センターで開かれる2024年AIAA賞の会場でメダルが贈られる。
Tadayuki YOSHIKAWA