自動車船、中国出しの行方注視。踊り場迎えるか
自動車専用船を運航する海運会社は、中国からの自動車輸出の行方を注視している。2021年以降、中国からの自動車輸出の急増が自動車船の船腹需給逼迫(ひっぱく)の主因となってきた。日本を抜き世界最大の自動車輸出国になるとみられる中国からの輸出が変調を来せば、船腹需給が緩み事業運営に影響を受ける可能性もある。 「非常にシャープな形で伸びていくということではなく、一定程度、中二階を迎えるのではないかとみている」 6日開催された2023年度第2四半期決算会見で、日本郵船の曽我貴也社長は中国からの自動車輸出をそう展望した。 理由については「欧州の港周辺に中国からの輸出車の在庫が増えている、中国国内でも電気自動車(EV)の販売が減速しスタートアップのようなEVメーカーの淘汰(とうた)が進んでいるとの情報がある」と説明した。 中国汽車工業協会(CAAM)のまとめによると、中国の自動車輸出台数は18―20年の3年間、年約100万台で推移。21年に201・5万台へ倍増し、22年は311・1万台まで増えドイツを抜き世界2位の輸出国になった。 自動車の海上荷動きがコロナ禍から回復する途上で、中国出しが急拡大したことにより、自動車船の需給はタイト化。欧州など遠隔地への輸出が急増したことも需給逼迫に拍車をかけた。 23年に入ってからも中国の輸出は旺盛で、CAAMのまとめに基づく調査会社の調べでは今年1―9月の輸出台数は前年同期比60%増の338・8万台に伸長。日本の同期の輸出(318・7万台)を上回り、世界最大の輸出国になる公算が大きい。 今後、中国からの輸出が鈍化すれば、自動車船の船腹需給が緩和する要因になり得る。ただ、輸出の伸びが一服したとしても需給はタイトな状況が続くとの見方もある。 新造船の供給が本格的に増えてくるのは24年後半からになるほか、豪州などでの滞船が船舶稼働率を押し下げ船舶の供給を絞っているためだ。 さらに、「自動車船で運びきれない新車がコンテナ船などで輸送されている。自動車船に余力が出てくればそれらは戻ってくる」(海運関係者)と見られるためだ。 日本の海運会社も中国積みの輸送ニーズの高まりに対応し、一定程度は中国車を輸送している。中国からの出荷が減速すれば、収益面の影響も受ける可能性がある。 日本郵船の自動車船事業への影響について曽我社長は、「中国出しの輸送量は全体の10%以内に抑えている。90%は日系を中心とする顧客の荷物が主体となっている」とし、影響は軽微にとどまると述べた。 自動車船の新造船竣工隻数は、欧州船社のまとめによると、24年は40隻が就航し20―23年の4年間の竣工量計31隻を上回る見込み。25年も60隻、26年も46隻がそれぞれ就航する計画だ。
日本海事新聞社