日本はがん死亡率1位だから、40歳からはコレステロールを下げてはいけない【柴田博×和田秀樹②】
沖縄は日本の平均の中で脂肪の摂取が一番多く、だから長生きだった
柴田 僕は平均寿命の短い秋田と長い沖縄を比較して追跡調査をしていたのでよくわかります。沖縄は日本の平均の中で脂肪の摂取が一番多く、だから長生きだったんです。もちろんそれを発表もしました。でも外国から来たある学者は「欧米より脂肪の摂取が少ないから長生きなんだ」と言うんです。 和田 一つの事実をどう解釈するかで施策は正反対になりますからね。 柴田 そう。僕らは沖縄の食生活は素晴らしいと言い、彼らはダメだと言う。結果、沖縄の人は脂肪を減らして、平均寿命を1位から最下位近くまで落としてしまいました。
BMI数値のトリック
和田 BMIの数値も疑わしいです。25を超えると「肥満」と判定され、痩せるよう指導されます。 柴田 ところが実際は25どころか、BMI27くらいの高齢者のほうが長生きしてるんですよ。減らす必要なんてないんです。 和田 というより、長生きしたいなら減らしちゃダメです。 柴田 本当にその通りですね。この肥満度の基準は日本独自のものです。国際学会から見直すよう何度も言われているのに無視ですよ。 和田 医師は健診の数値を見て「肥満だから減らせ」と言う。言われた側も「肥満はまずい」と思い、減らしてしまう。でも減らす必要なんてないんです。 柴田 この数値にも、ちょっとしたトリックがあるんですよ。今、日本人の91%は65歳以上で死にます。で、65歳以上の人は、だいたい太めなんですね。BMIを計算したら25以上になる人が多い。そして寿命は亡くなった人から計算するため「太っている人は死にやすい」という理屈が通ってしまうのです。 和田 データを都合よく解釈して、自分たちが言ってきたことに合わせようとしてしまう。 柴田 そうそう。実際に高齢者を調べれば、太っている人の方が長生きだってことは、簡単にわかるんですよ。でもそれをしないのです。 柴田博/Hiroshi Shibata 医学博士。1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。桜美林大学名誉教授。東京都健康長寿医療センター研究所名誉所員。老年学についての研究と教育を一貫して続けている。著書に『長寿の噓』『なにをどれだけ食べたらよいか。』など著書多数。 和田秀樹/Hideki Wada 精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。
TEXT=山城稔