遠藤彰弘氏#2「その場を一生懸命、一瞬一瞬を楽しむ」
鹿児島実業(鹿児島)から1994年に現横浜F・マリノスに入団。“マイアミの奇跡”で知られる1996年のアトランタ五輪では背番号10を背負った遠藤彰弘氏にお話を伺った。 ーー遠藤さん語る上で、やはりアトランタ五輪というのは欠かせないものだと思いますけど、 何か思い出深いことはありますか いや、もうぶっちゃけプレイできるような状態じゃなかったのですよ。実はアキレス腱がボロボロになっていて。実際アトランタの1戦目はアップ前、試合前、ハーフタイムと3本注射打ちましたね。それでも出たかったというのがあって、「もうこれでサッカー終わってもいいや」っていう覚悟でドクターにお願いしました。そんな状態でやりながら、目の前にロベカルやリバウドもいたので、もうなんかいまいちよく覚えてないです(笑)。 (ブラジル戦は)海外の経験もない、もう本当に何もわからない状態の中でやっていて、最初思いっきり手を抜いているのはちょっとわかった。そんな中でやりながら後半になっていきなりバーンとスイッチを入れた瞬間はわかったので、その迫力とかはもう本当に覚えていますね。技術とかじゃなくて、その迫力みたいなのは。(勝った瞬間は)実感はやっぱりみんなだと思うのですけど、あんまりなくて、なんとなく後からじわじわきたのですけど、 そん時はもうなんかよくわからないっていう感じです。冷静でもないし、興奮しているわけでもないし。 これ僕だけかもしれないですけど、攻められて当たり前だと、だってうまいもん、しょうがないじゃんみたいな、良い意味で開き直ったっていうとこがよかったのかなと。シュートを打たれても、(川口)能活のおかげもあってなんとなく防げて。鹿実の時もやっぱりずっとせめられる時もあったし、そこを粘り強くなんとかやらなきゃいけないっていう、「鹿実魂」みたいなのがあって、 そういうのも全部繋がっていんのかなとは思います。 ーー引退後はどういった活動をされているのですか Jリーグのユメセンをやったりとか、いろんな企業のイベントとかで全国回ったりとか、どこかのチームの監督みたいなのはやっていないですけど、国内、海外も含めていまはいろんなところに行っている感じです。 ーーどういったところを伝えていっている感じですか 基礎的な部分って絶対必要だと思うのですけど、いまちょっと考え方が変わってきていて、サッカーだとやっぱり止まってボール蹴る、最初は基礎をつけなさいみたいなのはあると思うのですけど、 ちょっといらないかなと。いるのですけど、最初はやっぱりボール触って楽しいとか、しかもそれを動きながら、ずっと動いているようなところで、ボール触って楽しいなっていうところが入口にならないと、昔のやり方だと多分飽きちゃうのかと思っていて。そこらへんをちょっと僕も変えなきゃなと、ちょうどこの1、2年で思っているところです。その順番を間違えたり、タイミングを間違えたりすると、その子たちがサッカー界から逃げていっちゃうのかなと近々思っているので、そこはちょっと僕のマインドも変えなきゃいけないしというところで、ちょっと逆に面白くなってきています。 昔のトレーニングがダメとか、そういうことじゃないのですけど、限られている時間の中でどういう風に持っていくか。練習量もいまは毎日やらないので、その中でどう良い選手を育てるかみたいなところ。 あとは経験値をどんどん上げていくっていうのはすごく重要だと思っています。僕はもう鹿児島のど田舎出身なので、もっと外を見れる機会だったり、海外に行ったりとかもそうですけど、そういうチャンスとかがもしあったら、 僕はオリンピックだけじゃなくて日本代表に入れたかなって勝手に言っています。僕はその候補までしか実際なれなかったので。もっと視野が広がるし、可能性も広がっていったのかなっていうのはちょっと思っています。 そういう機会を作るとかもそうですし、指導のやり方もちょっとずつ、自分なりのルールでいいと僕は思う。遠藤流じゃないですけど、そういうものをもっとちゃんとしたものを作っていかなきゃなとは思っています。 ーーどういったところを伝えていっている感じですか 「100%やり切れ」っていうのはすごく難しいかもしれないですけど、いま目の前を本当に自分の中で100%でやったら後悔しないと思うので、どういうポジションであれ、それがスタメンだろうがサブだろうが、応援する側に回ったとしても、その場を一生懸命、一瞬一瞬を楽しむというか、楽しむためにまず必死にやってほしい。 100%に行かなくても、それに近い部分までいけば、今後またサッカー続けていけるし、いま60、70歳になってもサッカーやっている方もいらっしゃるので、そこまでずっとサッカーに携わるというか、どんな形でもいいので、そのために良いきっかけとして、最後まで思いっきりやりきってほしいなとは思っています。 (文・写真=石黒登)