箱根駅伝Stories/伝統校を10年ぶりに本戦へ導いた東農大キャプテン高槻芳照「思う存分、実力を発揮したい」
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。 第100回箱根駅伝の東農大エントリー選手名鑑をチェック!
「11位、東京農業大学」のアナウンスを聞くと、涙があふれてきた。 10月14日の箱根駅伝予選会を突破し、10年ぶり70回目の出場を決めた東農大に、“新たな一歩”を呼び込んだのが主将の高槻芳照(4年)だ。 箱根予選会は1年時から3年連続のチームトップ。1年時には関東学生連合で8区に出走すると、今季は主将としてチームを引っ張ってきた。高槻が入学して、東農大は明らかに変わり始めたのだ。 そして高槻自身も、東農大と不思議な縁で結ばれていた。 福島・飯野中時代はバスケ部だったが、2年時に赴任してきた事務職員が高槻の走りを見て、「陸上を始めたほうがいいよ」と声をかけてきたという。 その職員は東農大OBで、福島市陸上競技協会の会長を務めていた。通っていた中学に陸上部はなかったが、そこから高槻は長距離レースに出場するようになり、「走るのが楽しくなって、強豪校に行きたいと思うようになったんです」。 中学時代の3000mベストが9分19秒だった高槻は、全国屈指の強豪校である学法石川高に入学。より本格的に競技に取り組むようになる。 次の転機は高校2年時の7月にあった福島県選手権10000m。現在もチームメイトの長谷部慎と高槻が1位(32分00秒62)、2位(32分06秒09)と、暑さの中でも粘り強い走りを見せた2人は、東農大の小指徹監督から勧誘を受けて、東農大の進学を決めた。 「小指さんから『絶対に伸びるぞ』と言われたんです。その後、農大以外から特に勧誘もなかったですし、必要とされたのがうれしくて、力になりたいなと思ったんです」 故障がありながらも、高槻は徐々に力をつけていき、3年時はインターハイを狙える位置にいた。 しかし、福島県大会の3000m障害を予選通過した後、胃腸炎になり、決勝は棄権している。 その後はロードで安定した走りを見せるようになり、全国高校駅伝は4区(区間20位)で出場。同学年の松山和希(東洋大)、2学年下の山口智規(早大)、長谷部らとタスキをつないで5位入賞を果たしている。 高3時の都大路は「雰囲気に飲まれた感じがありましたね」と振り返る。「長距離区間は別メニューで練習したんですけど、松山と渡辺亮太(現・東洋大4)は5000mベストが自分(14分22秒82)より20秒以上も速かったので、合わせるのが大変でした。特に松山とは実力差があったと思います」。