安全な観光「知床モデル」目指す 回復は道半ば 沈没事故から2年
観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の沈没で地元の観光業は大きな打撃を受け、2年が過ぎた今もまだ回復の道半ばにある。 【図でわかる】沈没地点と被害者らが発見された場所 北海道斜里町によると、2023年に同町を訪れた観光客は約86万人で、新型コロナウイルス禍前の19年の約7割まで回復。ただ、道全体では既に9割近くに回復しており、知床は他地域より回復が遅れているのが現状だ。 特に、夏場の目玉だった観光船のダメージが大きい。カズワンと同様に同町のウトロ漁港が拠点だった小型観光船「ドルフィン」は今年3月末に廃業。運航会社の社長によると、事故後の利用客数はコロナ禍前の半分以下に落ち込んだまま戻らなかったといい、社長は「みんな小型船に対する不安があるのだろう。回復は難しいと判断した」と肩を落とす。 一方で、信頼回復に向けた取り組みも進んでいる。事故を受け、同町や関係団体などが設立した「知床アクティビティリスク管理体制検討協議会」は4月19日、観光船を含む体験型自然観光の安全対策を盛り込んだ最終報告書を発表した。今後はエリアごとの危険度を格付けし、荒天時にツアーの中止要請などを行う事務局を町や観光協会などが新設。官民一体で、安全な観光を提供する「知床モデル」の確立を目指す。 流氷観光がピークを迎えた今年2月の町内の宿泊客数は19年同時期の9割を超えるなど、インバウンド(訪日客)需要を下支えに明るい兆しもある。知床斜里町観光協会の新村武志事務局長は「3月のインバウンド客数は(コロナ禍前の)ほぼ100%まで回復し、流氷シーズンは確実に観光客が戻ってきている。この勢いが春にも続いてくれれば」と期待をにじませた。【金将来、本多竹志】