『キングダム 大将軍の帰還』頼りの夏休み興行 有力作不足を救う大穴作品は?
7月第1週は、前週動員ランキング2位に初登場、興収では1位だった『ルックバック』が2週目に動員ランキングでも1位となった。週末3日間の動員は12万9900人、興収は2億2200万円。7月7日までの公開から10日間の累計で動員は35万9500人、興収は6億900万。2位以下の成績はかなり見劣りのするもので、動員ランキング2位の『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』の週末3日間の興収は1億150万円、動員ランキング3位の『ディア・ファミリー』の週末3日間の興収は1億400万円と、いずれも1億円のラインをギリギリ超える水準。マイケル・マン監督の新作『フェラーリ』がトップ5に入ったのは快挙だが、そのオープニング興収は興収8000万円となっている。 【写真】北米で爆発的なヒットを記録している『インサイド・ヘッド2』 「夏休み興行前の閑散期」と言えばそれまでだが、それにしても今年は「閑散期」ぶりが激しすぎる。そして、肝心の夏休み興行に関しても有力作品不足は否めず、それを証明するように夏休みど真ん中の8月13日からは、2022年12月に公開された『THE FIRST SLAM DUNK』が全国300スクリーン以上の規模でリバイバル上映されることになっている。直接的な原因は、昨年のダブルストライキの影響によるハリウッド映画の供給不足ということになるが、それだけでは説明がつかないほど日本映画、外国映画ともに夏休み向けの大作が「枯れて」いるのが2024年の映画界の現状だ。 そんな中、数少ない「鉄板」の1作となるのが、7月12日から公開される、原泰久の人気漫画を実写映画化した『キングダム』シリーズの4作目、『キングダム 大将軍の帰還』だ。東宝とソニーが共同配給する同シリーズは、2019年4月公開の『キングダム』が興収57.3億円、2022年7月公開の『キングダム2 遥かなる大地へ』が興収51.6億円、2023年7月公開の『キングダム 運命の炎』が興収56億円と、毎作興収50億円超えという非常に高い水準で安定した記録を残している。気がつけば2作目からは「毎年7月公開」に、そして3作目からはタイトルから数字が消えているが、注目すべきは2作目から3作目で数字が上昇していること。ライバル作品不足もあって、今回の『キングダム 大将軍の帰還』はシリーズ歴代最高記録も十分に狙えそうだ。 翌週の7月19日には『怪盗グルーのミニオン超変身』。その次週の7月24日には『デッドプール&ウルヴァリン』。8月1日には『インサイド・ヘッド2』と『ツイスターズ』。8月2日には『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』。と、一応期待できそうな作品の公開は続くのだが、北米で爆発的なヒットを記録している『インサイド・ヘッド2』現象が日本でも起こるか、近年明らかに供給不足の「誰もが楽しめる洋画実写作品」である『ツイスターズ』が大化けするかでもしないと、「『THE FIRST SLAM DUNK』のリバイバル上映にこんなにスクリーンを割くんじゃなかった!」とはならなそうだ。
宇野維正