車いすテニス・上地結衣にインタビュー!障害をハンデにしない考え方の変換方法「競技としてスキルアップするために車いすに乗りたい」
身長143cm。世界では小柄な日本人の中でも小さな体格だが、相棒である競技用車椅子に乗りラケットを手にすると、ひときわ大きな存在感を放つ。女子車いすテニスの上地結衣選手だ。 【動画】上地結衣選手が高校卒業後に真剣に考えた、なりたかった意外な職業とは? 史上最年少14歳で日本ランキング1位、21歳の時にはテニス4大大会制覇のグランドスラムを達成。功績の数々は、身長のハンデを微塵も感じさせないプレーで、世界の強者たちを圧倒して獲得してきた。4度目となったパラリンピックでもその圧倒的な強さを見せつけた。
障害をハンデにしない、状況を良い方へシフトする秘訣とは?
負けず嫌いなのは、テニスだけではなく、普段の生活も例外ではない。 「小さい頃は障害があるがゆえに『結衣はこれをやっちゃだめ』と言われる。『悲しい』というよりも『悔しい』でしたね。私もみんなと同じルールで生活して、自分に足りない部分は自分で工夫して補いたいという思いが強くありました。小学校の遠足では、みんなと同じように歩きたいから車いすを使わずに、ゆっくりだけど歩いて行ったこともありました」 しかし体の変化とともに、難しいことが増えてゆく。 「小学校高学年になると、体の重さに脚が耐えられなくなってきたんです。通常なら徒歩15分かからない登下校の道が、1時間ほどかかるようになりました。それでもゆっくり歩きながら登校していたけど、段々とその距離も辛くなって、とうとう道端に座り込んでしまったこともありました」 年齢とともにのしかかる障害の進行で、車いすでの生活が増えていった。しかしそんな状況とは反比例するかのように、彼女はいつも前向きだった。 「車いすが増えるのは受け入れがたかったけど、徐々に意識が変わって。歩けないからしかたなく車いすに乗るんじゃなくて、車いすテニスにハマっていくなかで、競技としてスキルアップするために車いすに乗りたいと思うようになりました。競技以外の時間も車いすと触れ合うことで、テニスのときにもっと自由自在に操れるようにしようって思ったんです」 なぜ、こんなにも前向きでいられるのだろう。 「多分私は考えをシフトするのが得意なんだと思います。物事を深く考えることは好きだけど、楽観的な部分もあって、それは今も昔も変わりません。 以前、シカゴ経由のオーランド行きの飛行機に乗ったつもりが、なぜか別の場所に行ってしまって、その日のうちにたどり着けなくなってしまったんです。翌朝の予定もキャンセルして、経由先のホテルに着いたのは夜10時過ぎ。突然のトラブルでヘトヘトだったけど、雪が降っていたのが嬉しくて、夜じゅう雪だるまを作っていました(笑)。 冷静に考えれば大変な状況だったけど、焦ったところで何も変わらない。『じゃあ何したらいいだろう?』と今できる最善策を見つけて、やるようにしています」 その考え方は、テニスでも活きているという。 「もし試合に負けてしまったとき、たとえ決勝まで行ってもそこで負けてしまったら負け。悔しい気持ちでいっぱいだけど、すぐに『もし同じ試合に出たらどうするか』『そのためには何をすべきか?』と考えるので、もう試合に出たくないとモチベーションが下がることはありません。時には、勝つためにはどうしたらいいかわからないこともあるけど、とにかく向き合って、何かヒントを得ようとします。 それは勝った試合でも一緒ですね。100%納得のいくような試合ってなかなかないから、いつも振り返りを忘れません」