「2000歩で寝たきり」「5000歩で心疾患や脳卒中」最新研究で判明した病気を予防する歩数の目安。しかし、12000歩は…
65歳までは1日8000歩、65歳以上の高齢者は1日6000歩
私たち日本人が毎日歩く歩数は、どれくらいが理想でしょうか。 現在、厚生労働省は、「65歳までは1日8000歩、65歳以上の高齢者は1日6000歩」を目標値として掲げています。これは、「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をめざす「健康日本21〈第三次〉」のなかで、厚生労働省が定めた数値です。 ちなみに、アメリカスポーツ医学協会は、身体活動として1日あたりのエネルギー消費量は300キロカロリーを目安とすることを推奨していました(「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」1986年3月6日)。 アメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて計算すると、体重60キログラムの人が、時速4キロメートル、歩幅70センチメートルで10分間歩いた場合、歩数は約1000歩、消費エネルギーは30キロカロリーとなります。 そうすると、この人が300キロカロリーを消費するためには、1万歩が適正ということになります。こうしたことも、かつて日本で「1日1万歩」が推奨された根拠になったと思われます。 厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、日本人の歩数は、65歳以上では1日平均で男性5396歩、女性4656歩です。目標とする6000歩までは、もう少し努力が必要ですね。
歩くことで生活習慣病の発症が数パーセント減少する
これからの10年で、65歳以上の男女が歩数を1000歩増やすとしたら、男性は1日平均の歩数が6396歩で目標をクリアできますが、女性は5656歩で目標を達成することはできません。 ですが、歩数を1000歩増やすことで、認知症や心疾患、脳卒中のリスクを下げることが理論上は可能になります。 前述のように、1000歩というのは、約10分の歩行で得られる歩数です。ですから、目標達成のためには、いままでより10分ほど余分に歩きましょう。 本書のテーマでもある、「歩く」ことを中心とした身体活動を増加させると、生活習慣病の発症が数パーセント減少することが期待されています。 ちなみに、私がいる抗加齢・予防医療センターを訪れる人のデータをみると、男性の場合、6000歩は約60分のウォーキングで達成しています。女性の場合は約78分かかっています。 また、日本人を対象とした大きな研究としては、群馬県中之条町の65歳以上の住民5000人を対象に、東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利先生らが20年間行った縦断研究がよく知られています。 この研究をもとに、具体的ないくつかの疾患について、それぞれを予防するためにおすすめしたい歩数を、表にまとめておきます。 なお、歩数だけを達成すればよいのではなく、「中強度の活動時間(たとえば20分以上を目安にする)が重要」であること、また、「歩きすぎ(たとえば1万2000歩以上、中強度の活動40分以上)」は逆効果にもなりえることに注意してください。 文/伊賀瀬道也 イラスト:瀬川尚志 写真/Shutterstock
---------- 伊賀瀬道也(いがせ みちや) 1964年、愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。米国Wake Forest大学・高血圧血管病センター(リサーチフェロー)、愛媛大学大学院老年神経総合診療内科特任教授などを経て2019年4月より現職。約4000人のドック受診者に指導を続けており、抗加齢医学研究のトップランナーとして知られる。『長生き1分片足立ち』(文響社)、『1分ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、「NHKスペシャル」(NHK)などメディア出演も多数。 ----------
伊賀瀬道也