ポーランドとベラルーシ国境で再び緊張高まる、兵士が移民に刺殺される事案も発生
ポーランドとベラルーシの国境での移民をめぐる緊張が最近再び高まっている。ポーランド政府の統計によると、同国に到着する移民の数は増加している。こうした中、国境地帯でポーランド軍兵士が移民に刺殺されるという事案が発生。トゥスク首相は国境に立ち入り禁止区域を設定すると発表した。 シリア出身の英語教師アハメドさんは、ベラルーシとポーランド国境のフェンスをよじ登ろうと4回試みた。アハメドさんは欧州連合(EU)加盟国ポーランドで亡命申請するため、西側へ渡るチャンスをうかがっている。 アハメドさん 「私たちは良い生活を求めて戦争から逃げてきた。平和を求めてやってきた。私たちはここにいる誰にも敵意を持っていない」 アハメドさんは中東出身の約12人とグループで、森の中の国境を越えようとしている。一方、武装したポーランドの国境警備隊と兵士らが彼らを厳重に監視している。 先週行われた欧州議会選で、ポーランドのトゥスク首相率いる中道政党「市民連合」が第1党となった。だが、より厳しい国境管理を求める極右勢力が議席を拡大。移民をめぐる緊張が高まりそうだ。 また、ここで起きているにらみ合いには地政学的な側面もある。ポーランドとEUは、2021年以来ロシアとベラルーシが混乱を引き起こす狙いで移民を国境を越えて送り込んでいると非難している。ポーランドはこれを「ハイブリッド戦争」と呼んでいる。 ロシア・ベラルーシ両政府はこの指摘を否定した。 だがポーランド政府の統計によれば、同国に到着する移民の数は増加している。5月28日には国境警備にあたっていた兵士が移民に刺されるという事案が発生。兵士はこのけがが原因で先週死亡した。これを受けて親EUのトゥスク政権は、国境沿いに立ち入り禁止区域を再導入することを発表した。 ポーランドのザレフスキ国防次官は次のように述べた。「残念ながら、この国境は安全ではない。立ち入り禁止区域の目的は、ポーランド兵がさらされているような攻撃に、いかなる人もさらされないようにすることだ」 イエメン出身のグラフィックデザイナー、ノアマン・アルヘミヤリさんは国境のフェンスを突破した。アルヘミヤリさんは当初、イエメンでポーランドの学生ビザを申請していたが却下された。 そこで彼はモスクワを経由してベラルーシに行き、その後ポーランド国境地域で22日間過ごし、チャンスを待った。 ノアマン・アルヘミヤリさん 「私たちには食べ物も水もなく、飢えて、死にかけていた。最後の日にポーランド国境を越えた。(記者から「どうやって越えたのか?」との問いに)飛び降りた。木製のはしごを持っていたので、それをフェンスにかけて飛び降りた。森から逃げ出し、支援団体に連絡した」 アガタ・クルチェフスカさんは、支援団体の運営者だ。クルチェフスカさんは、アルヘミヤリさんとほかの5人の移民が難民申請手続きを行うのを支援するため、国境の森を訪れた。 クルチェフスカさんは、立ち入り禁止区域が導入されれば事態はさらに困難になるだろうと述べた。 移民の支援活動を行う アガタ・クルチェフスカさん 「立ち入り禁止区域は我々に大きな影響を及ぼす。なぜなら区域内では専門的な仕事しかできず、例えばボランティア活動はできないため、立ち入ることができる人数が制限されるからだ。我々は再び隠れてゲリラ的な活動をしなければならない。さらにおかしなことに、国境警備にあたる兵士たちが私たちを追いかけることになり、これは完全に人的資源の無駄遣いだ」