このままでは家賃が爆上がり!人口減少の日本で家不足が深刻化する“矛盾”のカラクリ
● 世帯人員は減りまくり 世帯数が増え続ける日本の現状 日本の総人口は減り始めて久しいが、世帯数はいまだに増え続けている。同じ人口でも世帯を構成する人数が減れば、世帯数は増えることになる。たとえば、世帯人員2人が1人になれば、総人口は同じでも世帯数は2倍になる。 実際、2022年と23年で、日本全国の総人口は0.41%減少したが、世帯人員は1.24%減少している。この結果、世帯数は0.85%増えた。それは実数として、50万5253人となる。相当な数である。 この世帯増加数の分だけ、家が新たに必要になる。2023年の新設着工戸数は80万176戸だったので、世帯数に対して1.34%となる。世帯増加数よりも新設着工戸数は約30万多いが、既存住宅ストックで解体されたり、空き家になったりする戸数が30万戸を超えているので、空室率が下がることになる。 この結果、日本の主たる都市圏のほとんどで家賃が上昇している現実がある。J-REIT(日本版不動産投資信託)の直近の投資家向け資料では、同じ部屋の賃料の変化である賃料変動率は10%弱まで上がっている。 次に、世帯人員の推移を把握しておこう。国勢調査ベースで、2015~20年(直近5年)の間の世帯人員の平均年間下落率は全国で-1.03%、東京都で-0.73%であった。これは1970~2020年の間の年間下落率平均-0.85%、-0.77%とほぼ同じかそれより大きな下落となる。つまり、この間、ずっと一直線で世帯人員が減ってきたことを意味している。 問題は一直線に減り続けていることで、このまま行くといつか世帯人員が1人になり、全員が単身世帯となる。もちろん、その前に下降線は緩やかになるのだが、これまでの傾向を加味した予測をしても、それまで以上に世帯構成は少なくなり続けている。
● なぜ世帯数は増え続けるのか? 今どきの世相が反映されたその理由 世帯数が増える理由は大きく3つある。 1つ目は、若者が実家を出ることで、これの影響が最も大きい。 2つ目は離婚などの別離で世帯が分離することである。2023年の離婚件数は18万7798組で、これ以外にも同棲の解消などもこれに当たる。 3つ目は高齢者の単身化だ。老夫婦が配偶者と死別したりすると、2人世帯が1人になる。この数は2023年の死亡人口で157万5936人なので、その半数が単身化だとすると、80万世帯に及ぶことになる。 一方、世帯人員を増やす主な要因として結婚や出産が挙げられる。2023年の婚姻件数は47万4717組あり、そのうち単身世帯の男女が結婚して夫婦世帯になると世帯数は減ることになるし、2023年の出生件数72万7277人の数だけ世帯人員は増えることになる。しかし、非婚化や少子化のトレンドは継続中なので、その影響は徐々に小さくなってきているからこそ、世帯人員は減り続けているのだ。 こうしたいくつかの要因の組み合わせではあるものの、毎年1%ほどの世帯人員の減少が続いている。その主因は、若者の「実家離れ」である。以前、学卒後に親と実家にいる独身者が「パラサイト・シングル」と呼ばれた。 これは社会学者の山田昌弘氏が1997年に出版した著書『パラサイト・シングルの時代』で初めて使われ、親に家事を任せ、家賃も払わず、給料を自分のために使う気ままな独身貴族という意味合いと、少子化の背景にある非婚化・晩婚化の要因として注目された。しかし、今は実家を出る人(ノンパラサイト・シングル)が急増しているのが現実となる。