「風呂に行こうと誘われ…」教師からわいせつ被害を受けた生徒の両親が打ち明ける「怒り」と「悔恨」
前編記事『【教え子に性器をこすりつけ…】わいせつ行為で逮捕の中学校教員が裁判で明かした「身勝手すぎる動機」』では、教え子を相手にわいせつな行為と盗撮を行った疑いで逮捕・起訴された外崎三吉被告(44)の凶行について取り上げた。外崎被告に対して、被害者生徒の家族たちは激しく憤る。 「そ、そこイヤッ!」自らの行為を無修正で投稿…32歳女がわいせつ動画「戦慄の素顔」写真 「息子の様子がおかしくなったのは高校1年の途中でした。『人が怖い』と学校に行けなくなったんです。そのときはこちらも理由が分からないから、学校に行きなさいと言っていました。そのうち息子の状態はどんどん悪くなって、家から出られない、引きこもりになってしまったんです。私たちも息子に何があったのかいろいろと聞いてみました。そうしたら、『中学校のときに先生にひどいことをされた』『学校に行くと、いろいろと思い出してつらい』と話しはじめたのです」 こう話すのは、外崎被告からわいせつな行為をされたと訴えるD君の母親だ。 D君は’22年の9月に被害届を出し、それから約1年後の’23年10月16日に埼玉県警は強制わいせつの容疑で外崎被告を逮捕。そのときに押収した外崎被告のスマホには若い男性のわいせつな動画や静止画が1000点以上、保存されていた。押収されたわいせつな画像が証拠となり、その後も外崎被告は逮捕を繰り返した。 そして性的姿態等撮影や児童売春・ポルノ禁止法違反、児童福祉法違反などの罪に問われ、’23年6月7日にさいたま地裁で懲役3年の実刑判決が言い渡されている。 しかしD君が訴えた件だけは不起訴処分となった。外崎被告が「やっていません」と否認したこと。被害届を出すまでに3年かかったため、客観的な証拠が残っていなかったことなどが理由として考えられる。外崎被告のスマホにD君の画像は確認できなかった。 「息子から話を聞いて、まず思い出したのが、吹奏楽部の練習中に暴言を吐かれたりしたことでした。外崎は吹奏楽部の指導者としては優秀なのかもしれません。しかし、練習が相当に過酷なのも事実なんです。私は市の教育委員会に相談に行き、『息子が外崎に叩かれたり暴言を吐かれたりした。そのことがいまになって、トラウマのようになり、学校に行けなくなった』と話しました。一度、外崎に会わせてほしいと伝えたところ、教育委員会から『外崎先生と会う場を設けます』と連絡が入りました。息子といっしょに外崎に会うと、その場で、『愛情表現じゃないが、ちょっと叩いたりとか、そういうことはありました。すいませんでした』と謝罪して、そこで話し合いは終わったのです」(D君の父親) その夜、自宅に帰ってきたD君は「本当はもっとひどいことをされた」と外崎からわいせつな行為をされたことを話しはじめたという。 D君が被害にあったと訴えるのは、19年9月6日、群馬県で実施された吹奏楽の大会に参加するため、温泉施設に宿泊したときのことだった。 練習が終わり、食事もすませた夜の10時ごろ、D君は外崎被告の部屋に呼び出された。D君の前に外崎被告に呼び出されていた生徒が呼びにきたのだという。もう就寝時間になっていた。その部屋でマッサージなどをさせられた後、「風呂に行こう」と貸し切りの露天風呂に連れていかれた。 「鍵をして逃げられないようにされて、そこで外崎は息子の陰部をさわったりなどしたそうです。外崎は息子と二人で個室風呂に入ったことは認めています。しかし、その先のことは否認しているんです」(D君の父親) D君の訴えを聞いた両親は埼玉県の被害者支援センターに相談。「警察に相談したほうがいい」とアドバイスされ、被害届を出した。 「まさか息子が教師からわいせつなことをされていたとは思ってもみませんでした。息子も、男性が性被害にあったということで、よけいに言いづらかったのかもしれません」(D君の父親) 中学校に入学と同時に吹奏楽部に入部したD君。 最初は叩かれたり、言葉の暴力を受けていたが、校内でマッサージをさせられたりと少しずつ外崎被告と体の接触が増えていったという。 「外崎が逮捕されるまでの約1年間、息子は10回以上、警察で聴取を受けました。吹奏楽部は学校だけでなく、市民ホールでも練習するのですが、その楽屋にも呼び出されて陰部をさわられたりしたそうです。着衣の上からだけではなく、パンツを脱がされたこともあると話していました」(D君の父親) 客観的な証拠がないといわれながらも、なんとか逮捕までこぎつけた。 その後、再逮捕が繰り返されるなか、D君は法廷で証人として出廷し、外崎被告と対峙することを決意。検察庁で弁護人による反対尋問でのやりとりの仕方など、検察官と打ち合わせをしていたという。 しかし、’23年3月の終わり頃、すでに公判が始まっている中、不起訴処分になったという書類が届いた。 「警察の方は『あなたの息子さんが動いたから、外崎の犯罪が明らかになった。息子さんが被害届を出さなければ、まだ犯罪行為が続いていたかもしれない』となぐさめてくれました。ただ、とにかく息子本人が報われなかった。結局、息子の供述はいっさい認められなかったわけです。やっと話してくれたのに、誰も息子の話を信じてくれなかった。せめて証言台に立たせてやりたかったと思います」(D君の父親) 「学校に行けなくなってから、これまでの間に、息子は卒業アルバムもコンクールの賞状も全部捨ててしまいました。中学校時代の思い出とか吹奏楽部で活躍したこととか、全部なかったことにしてしまった。私たちもそうですが、中学校で時間が止まってしまったんです。PTSDと診断され、病院で治療を受けながら、息子の中でこれからどうすればいいのか、決着がつかないんです。いまでも『死にたい』と口にしたり、夜も眠れないことが多いみたいで。ここまでズタズタにされて、謝罪ぐらいしてほしかった」(D君の母親) 判決が言い渡される数日前、D君の父親は外崎被告と面会した。しかし、個室風呂に二人で入ったことは認めても、「なぜ、二人っきりで入る必要があったのか?」との質問には無言になるなど、肝心なところではまったく話をしなかったという。 「証拠、証拠、映像。二人っきりの密室でどんな証拠があるというんでしょうか。しかも相手は年齢も立場も圧倒的に上なわけです。10代半ばの男の子がそうそう抵抗できるものではありません。日本の法律って何なのかなって思うことがあります。結局、やられ損ですよね。被害者を守る法律ではなくて、逆に加害者を守る法律になっているような、そんな感覚です」(D君の父親) 外崎被告は最終意見陳述で「過去はもう変えることはできませんが、未来は変えられると信じて」と述べた。 一方でD君は、いまだに中学校時代から時間が止まったまま、立ち上がるきっかけすらつかめないでいる。 取材・文:中平良
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