SNS絡む投資詐欺などの対策、政府まとめる 広告の審査基準策定など要請
SNSを悪用した投資詐欺などの被害の深刻化を受け、政府は18日、「国民を詐欺から守るための総合対策」をまとめた。詐欺へ誘導する偽広告が出回っており、SNS事業者に広告への対応強化などを求める。 18日に開いた関係閣僚会議で決定した。警察庁によると、SNSを通じて投資を勧める「SNS型投資詐欺」と、恋愛感情を抱かせ金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」は、今年1~4月の被害件数が計3340件、被害額は計418億4千万円で、件数、金額とも昨年1年間の約9割にあたる。 このうちSNS型は2508件、334億3千万円で、4月だけで808件、115億1千万円の被害が出た。1~4月では、被害者の半数超がインターネット上で投資などの広告にアクセスし、被害に遭った。著名人をかたった偽広告も多く、実業家の前沢友作さんらが対策の必要性を訴えていた。 総合対策では、SNS事業者に対し、広告の事前審査の基準を策定して公表することや、日本語や日本の文化などを理解した従業員を配置して審査に当たることを要請する。捜査機関からの情報をもとに詐欺に関係する広告を迅速に削除することや、利用者を限定したチャットに誘導する広告を採用しないことも求める。ただ、偽情報の削除を事業者に義務づける法律はなく、対策に強制力はない。 今国会では、SNS事業者に対し、ネット上の誹謗(ひぼう)中傷の投稿の削除申請に迅速に対応することを義務づけた改正プロバイダー責任制限法が成立。肖像権などを侵害する恐れがある広告にも対応する。総合対策では、同法を速やかに施行するとし、削除のための判断基準となるガイドラインの策定を盛り込んだ。 SNSの公式アカウントやマッチングアプリのアカウントが悪用されないよう、アカウント開設時に本人確認を強化するようSNS事業者へ働きかける。SNS事業者には、知らないアカウントがSNS上で友達に追加される際、詐欺への警告を表示するなどの対策も求める。既にLINEでは今月から、友達登録されていないアカウントからグループトークに招待された際に「LINEを悪用した詐欺にご注意ください」という警告が出るよう新機能が追加されている。 総合対策では、SNS悪用詐欺のほか特殊詐欺などの対策も盛り込んだ。非対面で携帯電話を契約する際の本人確認の方法を、今後はICチップのあるマイナンバーカードなどの活用に原則一本化する方針も明記。運転免許証などを送信する方法は廃止する。対面での契約時には、事業者にマイナンバーカードなどのICチップの読み取りを本人確認で義務づける方針という。 また、高齢者がATMで振り込める金額を少額にする仕組みの制度化を検討することも入れた。偽サイトに誘導しIDなどを盗む「フィッシング」のメッセージを発信している端末に警告を行うことや、捜査機関からの照会に対応する国内窓口を設置することをSNS事業者などに働きかける。(板倉大地) ■政府の総合対策の主な施策 【SNSが絡む投資詐欺への対策】 ・広告の事前審査基準の策定と公表 ・広告の審査で日本語などを理解した従業員の配置 ・詐欺に関係する広告の迅速な削除 ・知らないアカウントを友達に追加する際の警告表示 ・捜査機関からの照会に対応する窓口の国内設置 (以上、SNS事業者への要請) ・ネット上の誹謗(ひぼう)中傷の投稿を削除する判断基準となるガイドラインの策定 【フィッシングへの対策】 ・フィッシングのメッセージを発信する端末に警告(携帯電話事業者への要請) 【特殊詐欺への対策】 ・携帯電話契約時の本人確認方法をマイナンバーカードなどの活用に原則一本化 ・高齢者がATMで振り込める金額を少額にする仕組みの制度化を検討 ・国際電話番号からの着信を止める手続きを担う事業者に体制拡充を要請(板倉大地)
朝日新聞社