「分かった気がする」 「広陵のボンズ」真鍋慧の境地 センバツ
世代を代表するスラッガーが満を持して甲子園に登場する。第95回記念選抜高校野球大会に出場する広陵(広島)の真鍋慧(けいた)選手(3年)だ。2年連続の大舞台を前に、こう手応えを語っていた。「何か分かった気がします」。その境地とは――。 189センチ、90キロの恵まれた体格で、高校生離れしたスイングスピードを誇る。米大リーグで歴代最多の通算762本塁打を放ったバリー・ボンズさんにちなみ、中井哲之監督(60)から入学当初につけられた愛称が「ボンズ」。プロ野球・DeNAの佐野恵太選手(28)ら数々の名選手を輩出してきた中井監督が「飛ばす力は歴代で一番」と言う大器だ。 1年生から主軸打者として活躍し、前回大会出場時は大阪桐蔭の前田悠伍投手や同じ左の強打者の花巻東(岩手)の佐々木麟太郎選手、九州国際大付(福岡)の佐倉俠史朗選手らとともに「1年生四天王」と呼ばれて話題を呼んだ。 全国区の注目を集めたことで他校からのマークが厳しくなった。特に狙われたのが内角高め。腕のリーチが長い真鍋選手は対応が遅れ、打撃フォームを崩された。昨秋の中国大会では四死球覚悟の厳しい攻めにも遭い、4試合で8打数2安打と成績を残せなかった。明治神宮大会ではフォームを修正し、2本塁打を放つなど復調したが、本人は満足していなかった。冬の間、進化のための研究と試行錯誤が続いた。 グラウンドでの打撃練習。その最初のティー打撃では左手のみでバットを持つ。「左手は利き手ではないので、右手より扱えない。左手の使い方がうまくなると、もっと飛距離になるなど、確実性が良くなる」と言う。 さらに練習で使用するのは木製バット。金属より芯の範囲が少ない木製で捉えることで確実性を身につけようとしている。「いろんな方から話を聞くというのが一番。もっとうまくなりたいと思っているので」と常に打撃のヒントを探している。靴下もチームメートが履いているのを見て、5本足のものに変えた。その取り組みの末に一つの感覚をつかんだ。 「上から“かむ”感じ。ボールの右下を(バットで)かむイメージで。上からたたいても、スーっていい回転で打球が伸びていく」。そう話す顔はまるで宝物を見つけたかのような笑顔だった。 今大会ナンバーワン強打者の呼び声も高い。そんな周囲の声も「注目されているのはありがたいことなんですけど、試合に勝つことが最優先なので、あまり重圧は気にならない」と気にしない。チームの勝利と自らの理想を追い求めていく。【生野貴紀】