新型パサートがフォルクスワーゲンの高級車イメージを変える!? もう、地味とは呼ばせない理由とは
フルモデルチェンジしたフォルクスワーゲンの新型「パサート」は、艶やかに進化していた! 【写真を見る】新型パサートの内外装、使い勝手などを徹底チェック(54枚)
世界で2番目に人気モデル
9代目に生まれ変わったフォルクスワーゲン・パサートの国際試乗会に参加した。 フランス・ニース空港で私たちを待ち構えていた新型は、「え、これが新しいパサートなの?」と、驚くくらい、エクステリアデザインが一新されていた。 LEDヘッドライトを用いることで天地に薄く仕上げられたフロントグリル周りは近未来的で精悍な印象。ボディサイドは余計な演出を極力省くことでパネルの微妙な抑揚を強調する手法で、上品で高いクォリティ感のなかにダイナミックなテイストを織り込むことに成功している。さらに魅力的なのがリヤまわりで、おなじくシンプルでありながら立体的な造形としてプレミアムカー並みの高級感を生み出している。とりわけ、左右のテールライトをライトバンドでひとつにつなげたデザインは、おなじグループのポルシェを思い起こさせるくらいクオリティが高い。 デザインのよさはパサートの伝統でもあるらしい。 実は、初代パサートをデザインしたのは、自動車デザイナー界の巨匠として知られる、あのジョルジェット・ジウジアーロ。そのデビューは1973年だが、この初代パサートをきっかけにしてフォルクスワーゲンは大規模な商品攻勢をおこなおうとしていた。つまり、フォルクスワーゲンの創生期を担った初代「ビートル」からの世代交代を図るため、最初に投入されたモデルが初代パサートだったのだ。 デザインをジウジアーロに依頼したのは慧眼としかいいようがないが、驚くべきことに、彼が最初に描いた「EA272」と呼ばれるデザイン案はコストが掛かりすぎるという理由で却下されてしまう。 しかし、ジウジアーロはこの判断にもめげず、デザインの見直しに着手。初代アウディ「80」をベースにしてコストを抑えるとともに、まるでクーペのようにシャープに下降するテールゲートが特徴的なハッチバックデザインを生み出したのである。そのスタイリングは、初代「ゴルフ」と似ているものの、よりスポーティでダイナミック。それどころか、世に送り出された順番でいえばパサートが先で、これに続く形で初代「シロッコ」や初代ゴルフがデビューしたというのだから驚く。 話の脱線ついでに申し上げると、1983年にデビューした2代目パサートは、日産自動車のノックダウン生産(主要部品は本国から輸入したうえで主にアッセンブリーを現地で行なう生産方法のこと)により、日本では「サンタナ」と名を変えて販売されたことを記憶する読者もいるはずだ。 おなじモデルは、中国で「上海」の名で発売。これは中国国内の合弁事業として生産された車両で、主にタクシーなどで使われてロングセラーとなった。 そんなグローバルモデルのパサートは、これまでの50年間に3400万台以上が生産され、世界中の国々で販売されたという。ちなみに、2022年のグローバルな販売台数は42万6000台で、フォルクスワーゲン・ブランドとして2番目の人気モデルだったのだから、今回のモデルチェンジに力が入っていたのは当然といえる。