本田圭佑と香川真司はロシアW杯で世代交代の流れに反抗できるのか?
高い位置から積極的にプレスをかけて、ボールを奪うやサイドから素早く攻める。球際の攻防でも激しさを貫き通すために、運動量が豊富な山口蛍(セレッソ大阪)と井手口陽介(ガンバ大阪)をインサイドハーフに起用。右サイドに指名したチームナンバーワンの韋駄天、浅野には貪欲に裏を狙わせた。 山口と井手口が完遂したミッションを、香川は得意としない。スピードで勝負すれば浅野には勝てないと本田も自覚している。システムを「4‐1‐4‐1」に変更したときから、ベンチには入るものの出番はないと悟ったのか。本田はほとんどアップすることなく、勝利を見届けている。 しかも、ともにコンディションに不安を抱えていた。右ふくらはぎの肉離れで出遅れていた本田は新天地パチューカでデビューしたばかりで、香川も6月に負った左肩脱臼が完全には癒えていない。1日にはドルトムントに戻り、治療を優先させることも発表された。 国際親善試合と異なり、公式戦の交代枠は3しかない。名前と実績を優先させた末にオーストラリアとの激しい肉弾戦で悪化させ、途中でベンチへ下がる状況になればそれこそ目も当てられない。オーストラリア戦後に、キャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)はこんな言葉を残している。 「ハリルホジッチ監督は戦術という部分で、かなり長けた方だと思う。ブラジル大会でアルジェリア代表を指揮したときも、グループリーグと決勝トーナメント1回戦の4試合で、かなりメンバーを変えていた。その意味でもメンバーは固定されないと思うし、誰にでもチャンスがあるのかなと」 たとえば右サイドでボールを落ち着かせるプレーが必要な相手や状況ならば、本田が必要とされる。トップ下やインサイドハーフに創造性や攻撃力を求めたいのならば香川となる。最前線を2枚にするときには、今シーズンのプレミアリーグですでに2得点している岡崎の出番となる。 対戦相手の特徴に合わせて臨機応変に、システムや戦い方を変える。誰が起用されるのか、選手自身もぎりぎりまでわからない指揮官の采配を、本田や岡崎と同じ1986年生まれの盟友、DF長友佑都(インテル・ミラノ)は笑顔で歓迎する。 「僕自身も読めないのだから、オーストラリアも読めなかったと思う。若い選手たちが頑張って、悔しい思いをしているベテランが刺激を受けてまた頑張る。チームが成長していく、という意味では最高なんじゃないでしょうか。僕も今日はたまたま出られただけと思っているので」 本田たちの突き上げを受けたベテラン勢が抗うことで生まれた競争意識が、ワールドカップ南アフリカ大会で岡田ジャパンを躍進させる要因のひとつになった。あれから7年。若手の挑戦を受ける立場になった本田たちのギラギラした思いが、来年のロシア大会へ向けてハリルジャパンを進化させる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)