「怒られる恐怖からやっていた」朝6時から深夜1時まで続いたブラック研修を否定しきれない20代男性の本音
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。 ■入社前の研修で行われた「大声バトル」 「ぐおぉぉ!! おはようございますっっ!」「おーはーよーご・ざ・い・ま・すぅぅぅ」 関東近郊の人里離れた山奥。ぽつんと建つ合宿所に隣接する空き地で、40人ほどの若者が輪になっている。その中の2人が中心に進み出て大声を張り上げ合う。すかさず講師と思われる男が「がんばっていたと思うほうに手をあげろ!」と怒声を放つ。
若者たちの挙手によって勝敗がつくと、男が“敗者”に向かって立て続けに罵声を浴びせる。「会社の金を無駄にしてんじゃねぇ!」「もう学生じゃねーんだぞ!」「だからお前はダメなんだ!」。 最初はためらい、恥ずかしがっていた若者たちの「おはようございます」は次第にエスカレートしていく。息が続く限りわめき続ける人、泣き崩れるように叫ぶ人、地面をのたうち回りながら絶叫する人――。 名付けて「大声バトル」。異様な光景は都内のある会社による入社前の研修の一場面だ。3泊4日の期間中、バトルは何度も繰り返された。5年ほど前にこの研修に参加したヨウヘイさん(仮名、29歳)が振り返る。
「ほとんどの人は怒られる恐怖からやっていました。そういう僕もこのバトルで1位を取ったんですけど……」 ヨウヘイさんによると、研修は、数社の中小企業が合同で社員研修を担う会社に依頼して実施。合宿所に着くと4、5人のチームに分けられた。和気あいあいとした空気が一変したのは、5分以内にチームの名前やスローガンを決められなかったことに対し、研修を主催する会社の社員から突然「ふざけんじゃねー!」と怒鳴りつけられてからだという。