有元葉子さんの「おいしいものは体にいいのよ」とろける醤肉ジャンロウ
「おいしいものは身体にいいのよ」。有元葉子さんはしばしばこの言葉を口にする。 「野菜が身体にいいのはもちろんです。ただ、運動したら、肉や揚げものをたっぷり食べたいし、疲れたときには甘いものが欲しくなります」と有元さん。 有元葉子さんの「とろける醤肉ジャンロウ」レシピを写真で見る 「見知らぬ土地で、スマホ頼みではなく、太陽の位置や見える景色を頼りに歩くと認知機能が高まると聞きました。食べることについても同様に、自分の身体の声を頼りにしてはいかがでしょう」。 有元葉子さん直伝の、真っ当においしく、体にやさしい、理にかなった調理法と食べ方をお届けします。今回は、ひたすら煮込んでとろけるおいしさの牛肉の煮込み料理「醤肉」。
「ひたすら煮込むだけ。とろける牛肉の贅沢な味わいをどうぞ」
「醤肉(ジャンロウ)」は牛肉の中国風醬油煮。長時間煮て、とろけるようになった肉はお箸でちぎれる。牛の脂をしっかり取り除き、酒と醤油だけで煮込むので、すっきりキレのよい仕上がりに。酒の肴によし、白いご飯のおかずにもよし。 「お肉の料理ではありますが、肉の旨みを吸った干し椎茸と昆布のおいしさは格別です。我が家では、干し椎茸と昆布の料理と呼んでいるほど」 牛の「ブリスケ」という部位を使う。ブリスケとは、前足の付け根あたりの前側部分。よく動かすところなので、筋肉質で硬め。コラーゲンが多く、煮込み料理によく使われる。手に入らなければ、すね肉でもよい。 「牛肉は煮ると縮みますから、半分に切ったりせず、大きいまま煮込みます。ことことひたすら煮込むだけなので時間はかかりますが、手はかかりません。せっかくならたくさん作って、残りは切り分けて牛丼に、ラーメンに。刻んで粒山椒と一緒にご飯に混ぜても」 上手に作るポイントは、塊肉がちょうど入る深めの鍋を用意すること。クッキングシートと落とし蓋をして水分が蒸発しすぎないようにし、煮汁を対流させて味が全体に均一にしみこむようにする。 また、クッキングシートについた余分な脂を取り除けば、すっきりした味わいになる。2日間かけてじっくり煮込むので、味がしっかりしみて、口の中でスッと溶けるような肉のやわらかさを味わえる。 <材料 作りやすい分量> 牛のブリスケ 800g~1kg 昆布 25cm角1枚 干し椎茸(どんこ) 7~8枚 生姜 大1個 酒 1カップ 醤油 1/2カップ~1カップ <作り方> 1 肉を深鍋に入れ、水をひたひたに入れる。強火にかけ、煮立ったらアクをすくい、火を弱める 2 干し椎茸は石突きを取り、笠と軸に切り分ける。生姜は皮付きのまま2~3等分する。1の鍋に昆布、干し椎茸、椎茸の戻し汁、生姜、酒を加え、1時間ほど煮る。常に肉が水分に浸っている状態をキープできるよう、水を適宜足しながら煮る 3 2に醤油1/4カップほど加える。煮汁の水位が肉よりも下がってきたら、クッキングシート、落とし蓋の順にのせ、さらに30分ほど煮る。出汁だけ少し飲んでみて、おいしいと感じるくらいの味加減にする。足りなければ醤油を足す。この状態のまま、次の日までおく(暖かい季節なら粗熱をとって冷蔵庫へ。真冬ならそのまま) 4 次の日、落とし蓋と脂がついているクッキングシートを取り、出汁に残っている白い脂の塊も丁寧に取り除く。 5 やや強火に4をかけ、沸いてきたら弱火にし、味見をしながら醤油を適宜足して1時間ほど煮る。火を止め、そのまま冷ます。食べる直前に温め直し、肉、椎茸、昆布を食べやすく切り、汁と共に器に盛る 有元葉子(ありもとようこ) 料理家。素材を生かしたシンプルで力強い料理と、環境にも配慮した心地よい暮らし方に多くの共感が集まり、著書は100冊を超える。使いやすく美しい調理道具「ラバーゼ」シリーズを提案し、東京でセレクトショップ「SHOP281」を経営。イタリア・ウンブリアと信州にも家を持ち、東京と信州、イタリアでの生活を楽しむ。 RECIPE BY YOKO ARIMOTO, TEXT BY MIKA KITAMURA