「自閉スペクトラム症」の子どもの特性はご存知でしょうか? 関わり方を児童精神科医が解説
グレーゾーンにいる子との関わり
編集部: グレーゾーンというのは具体的にはどのような状態像の子どもを表すのでしょうか? 岡先生: 「社会的コミュニケーションの問題」と「常同性(こだわり、反復行動)と感覚過敏の問題」の2つから考えると、「大人との関わりは問題がなくても、同年代の子ども同士の集団に適応することができない子ども」や「周囲の音に対する過敏性、強いこだわりを持っていても我慢しながら学校生活をおくっている子ども」が当てはまると考えられます。 編集部: グレーゾーンの子どもたちにはどのような特性がありますか? 岡先生: グレーゾーンと言われる子ども達は、自閉スペクトラム症の特性を持ちながらもある程度我慢したり、ほかの能力で補ったりしながら社会生活を送ることができます。 こういった我慢や努力が積み重なり、かえって苦痛が強くなってしまい、様々な問題が思春期~成人期にかけて起きてしまうことがあります。 編集部: グレーゾーンにいる子ども達と関わる上で、周囲の人が考えるべきことはどのようなことですか? 岡先生: 「診断がつくかつかないか」「障害が目立つか目立たないか」ではなく、「子どもの持つ特性がどのように苦しさを生んでいるのか」ということに注目していくことが重要だと考えています。
自閉スペクトラム症の特性を持つ子との関わり
編集部: 自閉スペクトラム症の特性を持つ子にまつわる問題について教えてください。 岡先生: 自閉スペクトラム症の特性は「周囲からの情報の受け取り方」や「周囲に対する発信方法」が定型発達の子どもと大きく異なると言えます。 このような特性によって、「社会的ルールの理解」が独特になってしまったり、「困りごとの発信」が難しくなってしまったりしてしまうことがあります。 特性によって生じた独特の困りごとへの理解がなければ、子どもに対して「わがまま」「融通が効かない」「変わった子」といった不名誉なレッテルが貼られ、本人の良さや「見えない努力」に焦点が当たらなくなってしまいます。 編集部: 自閉スペクトラム症の特性を持つ子の保護者にとっては、どのような問題が生まれますか? 岡先生: 日々の生活で関わる保護者にとっては「融通の効かなさ」は「扱いにくさ」につながり、感情的な対応が増え、お互いに辛いコミュニケーションが増えてしまうことがあります。 編集部: 自閉スペクトラム症の特性を持つ子やその親御さんに対して支援者が関わっていく上でのアドバイスはありますか? 岡先生: 特性の強い子どもは日々のコミュニケーションが「辛い」コミュニケーションとなってしまっていることが多く見られます。 このような体験を少しずつ変え、楽しいコミュニケーションを増やすこと、その結果として自分以外の存在と関わることが楽しいと感じられるように関わっていくこと(あるいは関わることで楽になることがあること)、保護者の方に子どもが変化していく様子を一緒に見てもらっていくことが支援の第一歩となると考えています。