2度仮釈放されたのに、そのたびにまた刑務所へ。「遺族の思いを裏切った」 金目当ての強盗殺人を起こした無期懲役囚の「更生」の意思
その男は1970年代、金品を盗む目的で住宅に侵入して女子大学生を絞殺した。ギャンブルで抱えた借金を返済するためだった。強盗殺人や強盗強姦未遂などの罪で無期懲役が確定した。自らの犯罪をこう表現する。「鬼畜の事件です。人として最低の事件を起こしたんですよ」 【写真】「いまだに心に残るくらい強烈なうめき声だった」女性を金づちで撲殺し、強盗殺人罪で服役40年 人生の大半を刑務所で過ごす70代男の「罪の意識」と「社会復帰」
男は約25年間服役して仮釈放された。だが、1カ月もしないうちに刑務所に戻ることになる。それから13年後に再び仮釈放となって出所。しかし、その後犯した罪により、今は徳島刑務所に収容されている。 記者は徳島刑務所で3人の無期懲役受刑者を取材した。これまでに、(1)この刑務所で40年服役する男(2)10代で殺人犯になった元少年、という2人の無期懲役受刑者の記事を配信した。 3人目は、無期懲役刑で服役し、2度の仮釈放を経験した70代の受刑者。彼にとっての「更生」とは。(共同通信=今村未生) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ※刑務所内で撮影したルポ動画は「共同通信YouTube」でご覧ください。 ▽人の将来奪う事件。25年で仮釈放 「あと3日もすれば被害者の命日です」。8月、70代の田中茂受刑者=仮名=は取材にこう切り出した。事件を起こしたのは20代のころ。女性を殺害後、良心の呵責から自白して、逮捕された。
女性とは面識がなく、「通りすがり」の形で、金のために人の命を奪った。女性の将来の夢は学校の先生。「自分は完全に頭が壊れてしまっていた。彼女の前途を閉ざしてしまった」 無期懲役の判決を受け、西日本の刑務所に収容された。20年がたった頃、女性の母親から手紙が届いた。田中受刑者が出した手紙への返信だった。「立派な社会人になってください」。そう書かれていた。当時は現在より服役期間が短い傾向があり、約25年で仮釈放された。 ▽保護観察中にルール破り、再び刑務所へ 無期懲役判決を受けた人は仮釈放になっても生涯、「保護観察」が付く。保護司らとの定期的な面接が義務。順守事項を守らなければ再度、刑務所に収容される決まりだ。 田中受刑者は仮釈放直後に無断外泊。さらにギャンブルにも手を出していた。こうした点を指摘され、出所からわずか23日後、再び西日本の別の刑務所に収容された。それからの服役は13年間に及んだが、再び仮釈放されることになった。 ▽仕事に就き、収入も得たが…