2度仮釈放されたのに、そのたびにまた刑務所へ。「遺族の思いを裏切った」 金目当ての強盗殺人を起こした無期懲役囚の「更生」の意思
2度目の出所後は建設作業員として働き、月に30万円ほどの収入を得るようになった。だが、脳梗塞で倒れてしまう。体にはまひが残り、建設現場での仕事を続けることは難しくなった。 仕事をビル清掃員に変えた。月の給料は6万~7万円。生活保護を受けていたが、福祉の担当者とトラブルになり取り消された。 金に困った末、今度は窃盗事件を起こしてしまう。「やってはいけないと自覚していた。昔の習性みたいなもので、困ったからと…」。2度目の出所から約3年弱で徳島刑務所に収容され、今に至る。 ▽「立派になってくれという遺族の思いを裏切った」 3つの刑務所ですでに計約40年服役しているが、家族はどうしているのか。 田中受刑者は父親と祖父母に育てられた。父親は酒を飲んでは暴れる人で、そんな姿に嫌気が差した田中受刑者は中学卒業後に家を出た。その父親は30年ほど前に亡くなった。強盗殺人事件を起こす前の20歳ごろに会う機会があった母親は、後に病気で入院した。「たぶん亡くなったと思う」。家族とのやりとりは途絶え、仮釈放の際の引受人は出所者などの支援を行う更生保護会になっている。 無期懲役判決を受けた受刑者が2回も仮釈放になることはめったにないとされる。3回目となると例があるか不明だ。これからどう生きていくのか。「刑務所で死亡する『獄死』になると思う。自分の大きな過ちの代償なので。被害者遺族の立派になってくれという思いを裏切っており、当然の報い」
人生の半分以上を刑務所で過ごしてきた。やり直したいかと記者が問うと、涙を流しながら「そうですね」と答えた。そして、こう語った。「死と紙一重の生活を与えられ、生かされている。やり直したいというかすかな希望は持っている」 ▽50年以上服役する受刑者は10人 法務省によると、無期懲役受刑者の数は2022年12月末時点で1688人。このうち、服役期間が40年以上50年未満の受刑者は66人、50年以上服役する受刑者は10人いた。2022年の1年間で41人が死亡し、仮出所者した5人の平均収容期間は45年3カ月だった。 × × × 【これまでの配信記事はこちら】 (1)女性を金づちで撲殺し、強盗殺人罪で服役40年。人生の大半を刑務所で過ごす70代男の「罪の意識」と「社会復帰」 (2)10代で起こした強盗殺人事件。無期懲役で服役する30代受刑者の「贖罪」とは