最強ソフトバンクは西武の黄金期に匹敵!
2位の日ハムに3タテを食らわせ、着実にマジックナンバーを減らしているソフトバンクは、最短で14日にも優勝が決まる。先発、中継ぎ、抑えの充実に加え、不動の中軸と脇役達が入れ替わり活躍していく切れ目のない打線。その強さは工藤監督の出身母体である西武の黄金期に匹敵するという声が聞こえてきた。工藤監督の西武入団時の監督で、西武の第一期黄金期を作りあげた広岡達朗氏も、その意見を持つ一人。 「ソフトバンクは西武の黄金期に似てきているとは思う。野球を知っている選手が、ポイントのポジションにいて、ベンチが動かなくとも自分らでゲームを作れる。松田や内川が、そういう立場の選手だ。私は最初に黒田、片平をトレードで獲得したが、その役割を期待した選手だった。その後、石毛や辻らの野球を知っている選手が西武を支えた。 野球に関しては、打者にはセンター返し、投内連携を含めた守備のフォーメーションという基本を徹底したが、私の監督時代に入ってきた工藤は、どういうチームが勝てるのかを見てきた。若い頃には森にいじめられ(笑)、200メートル×100本などの厳しいトレーニングメニューをさせられていたが、私が導入した食生活の改善などもチームに取り入れているとも聞く。今は勉強していない監督が目立つが、その点工藤は違うように見える。彼自身、西武のやり方が根っこにあるのだろう」 野球を知っている選手の存在――。 ソフトバンクが西武の黄金期に匹敵しているとされる理由のひとつがそこだ。 1982年に監督就任した広岡氏が、4年で3度優勝を果たしてチームの基礎を作った第一期の西武黄金期のベストオーダーは以下のようなもので、山崎(元ロッテ)、片平(元南海)、黒田(元南海)というトレード組のベテランが、他チームから見れば攻守の穴を埋めていく嫌らしい存在感を示した。 1982年のベストオーダー 6 石毛宏典 4 山崎裕之 5 スティーブ D 田淵幸一 9 テリー 3 片平晋作 7 大田卓司(立花義家、西岡良洋) 2 大石友好(黒田正宏) 8 岡村隆則(蓬莱昭彦) 主な投手陣 東尾修、松沼兄弟、杉本正、高橋直樹、森繁和 森監督が1990年から3年連続日本一に輝いた第二期黄金期になると、辻、石毛、伊東、田辺ら、広岡監督時代に鍛えられた選手が、グラウンド内のマネジメントを預かり、そこに才能にあふれた若手の秋山や清原、助っ人のデストラーデらが爆発力を作った。今のソフトバンクに重ねると、柳田が秋山。イ・デホがデストラーデ、松田が石毛の役割だろうか。 1992年のベストオーダー 4 辻 発彦 9 平野 謙 8 秋山幸二 3 清原和博 D デストラーデ 5 石毛宏典 7 大塚光二(吉竹春樹、安部理) 2 伊東 勤 6 田辺徳雄 主な投手 渡辺久信、工藤公康、郭泰源、石井丈裕、渡辺智男、潮崎哲也、鹿取義隆 「野球を知っている選手」の顕著なプレーが8月29日の日ハム戦にあった。5-5の同点に迎えた一死満塁から松田は、あわやゲッツーのショートゴロを放ったが、打った瞬間に打球の行方も確認せずに一塁へまっしぐら。「世界陸上をやっているので僕も負けないようにした」と、松田は試合後笑わせたが、全力疾走で併殺を成立させなかったことでチームは決勝点を刻んだ。巨人の阿部や村田では考えられない主軸の全力プレーだ。そのリーダーシップは、確かに西武の第二期黄金期を支えた石毛に重なる。